Japan Association for Medical Informatics

[3-H-1-06] 全国医療情報プラットフォームとの共存・併用による効果
~あじさいネットの取組み~

*Takehiro Matrsumoto1,2 (1. Department of Medical Informatics, Nagasaki University Hospital, 2. Department of Medical Informatics, Graduates School of BIomedical Science)

EHR, PHR, Regional Medical Information Network, National Medical Information Platform

政府は、全国医療情報プラットフォーム(以下 PF)を構築し、2025年に運用予定であるが、全国には、地域医療情報連携ネットワーク(以下 地連)が運用されており、その継続運用が不安視されている。そこで、両者を比較すると違いがあることがわかる。
地域の全医療機関が参加している地連はほとんどないが、PFは全医療機関を対象としている。一方、地連には20年以上の実績があるが、PFは構築段階である。また多く地連は地域の拠点病院の電子カルテ情報を共有しているが、長崎県のあじさいネットのように全診療録を対象としている地連も存在するのに対し、PFは3文書6情報と診療録の一部でしかない。欧米各国はすでにEHR情報のリアルワールドデータ(以下 RWD)としての利活用を始めているが、この点では、構造化データのみを共有するPFに分がある。
両者は主に地域での診療情報共有利用とRWDとしての利用があるが、いずれにおいても診療情報の網羅性は大切であり、データ利活用のためには、データの構造化を始めデータ精度や標準化が重要である。すでにPFデータ利活用のためのAPI連携仕様は公開されており、両者の併用が両者の欠点を相補的に補完し、より効果は高いものと思われる。さらに地連は、PFより自由度が高い点も利点と思われる。
あじさいネットでは地域の拠点病院の全電子カルテ情報共有だけでなく、同一画面を使った在宅・介護情報の共有、これから重視されるオンライン診療機能、専門性の高い疾患に対するネットワーク型地域連携パス等様々な機能を付与しているが、PFは3文書6情報の医療情報以上の共有予定はない。コストの問題はあるが、このように地域独自の問題解決を目的とした機能強化が可能な点も地連の利点と思われる。
以上のように、PFと地連には両者ともに利点と課題があり、両者の併用こそが我が国型のEHRとして優れた実績と発展を生むものと考えられる。