一般社団法人 日本医療情報学会

[3-I-2-05] オンプレミス型大規模言語モデルを用いた退院時サマリ生成の自動化の検討

*門野 勇介1、山下 晃平1、粂川 雅子2、阪本 恭子3、疋田 智子4、山本 剛3、中井 隆史1、岸本 和昌4、竹村 匡正1 (1. 兵庫県立大学大学院 情報科学研究科, 2. 兵庫医科大学情報センター, 3. 大阪警察病院, 4. 京都大学医学部附属病院)

On-premise LLMs, Discharge Summary, Medical Records

【目的】医師の長時間労働は深刻な問題であり、文書作成業務がその一因となっている。なかでも退院時サマリの作成は入院患者の膨大な経過記録をまとめる業務のため、この負担が軽減できれば医師の労働環境の改善が期待される。一方で、生成AIの性能は飛躍的に向上し、大規模言語モデル(LLM)は要約などにおいても自然な文章の生成が可能である。患者情報を安全に扱う必要がある医療分野では、データを外部に出さずに処理できるオンプレミス型LLMの利用が進んでおり、これまで我々も、オンプレミス型LLMを用いて退院時サマリの自動生成の可能性を検討してきた。しかし、抽出された情報の誤りや不自然な日本語が出力されるなどの課題があった。最近では、クラウド型LLMの性能に匹敵する約100B規模のLLMも公開され、正確な情報の抽出や出力の細かい制御が実現しつつある。本研究では、このLLMをオンプレミス型LLMとして用いて退院時サマリを生成し、その実用可能性について検討する。
【方法】Cohere社のCommand R+をオンプレミス型LLMとして実装し、退院時サマリの各項目を箇条書きするように指示したプロンプトと電子カルテデータを合わせて入力して退院時サマリの生成を行った。その後、生成されたサマリが元の文章のどの箇所を選んだか、またその情報の正確さについて実際の退院時サマリと比較した。
【結果】プロンプトで指定した形式に沿って、元の文章から正確な情報が抽出され、日本語についても文法の乱れがない自然な文章が生成された。一方で、一部の項目では、正確な情報が抽出されていても、実際の退院時サマリの記載内容とは異なる部分があった。
【結論・考察】結果から、オンプレミス型LLMを用いた退院時サマリ生成の実用可能性が示唆された。しかし、退院時サマリを生成する際に元の文章のどの部分を重視するかについては検討の余地がある。
【倫理的配慮】本研究は、大阪警察病院倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号1817号)。