[3-I-4-01] レジリエンス・エンジニアリングの視点を取り入れた高齢者虐待予防の研修評価
elder abuse, Home visiting nurses, Resilience Engineering
【目的】2024年度より全事業所で高齢者虐待防止の推進が義務化され,高齢者虐待防止の研修や組織体制づくりが行われている.訪問看護師は,虐待につながる可能性のある不適切ケアを早期発見し迅速かつ適切に対応していると考えられる.しかし,虐待が起こった「失敗事例」に目を向け,組織的にルールの追加や変更によって対応することが多い.この方法は,スタッフの裁量制限や意欲低下の可能性が指摘されている(岡,2022).そこで,「成功事例から学ぶ」ために,レジリエンス・エンジニアリング(E. Hollnagel,2010)の視点を取り入れた高齢者虐待防止の研修を実施,評価を行った.【方法】2024年6月に訪問看護ステーションの管理者8名を対象に対面研修を行った.参加者がチェックシートで虐待防止のチェックポイントを確認したのち,解説を行った.グループワークでは,虐待につながる可能性のある不適切ケアを「虐待の芽」と捉え,参加者が迅速かつ適切に対応できた事例から,適切な対応につながった要因を抽出した.【倫理的配慮】大阪公立大学情報学研究科の研究倫理委員会の承認を得た。【結果】グループワークでは,尿道カテーテル屈曲による尿路感染を防止できた事例,カニューレのずれによる低酸素状態を防止できた事例を取り上げ,防止できた要因が抽出できた.研修後アンケート(8名,回収率100.0%)では,「高齢者虐待防止のチェックポイント」について,「理解できた」7名(87.5%),「少し理解できた」1名(12.5%)であった.高齢者虐待防止のための組織の取り組みについては,「理解できた」1名(12.5%),「少し理解できた」6名(75.0%),「あまり理解できなかった」1名(12.5%)であった.【考察】参加者は,高齢者虐待防止のチェックポイントへの理解を深めていた.今後の課題としては,不適切ケアに対応できた要因の活用,組織の取り組みについての理解を深める内容を研修に追加する必要がある.
