一般社団法人 日本医療情報学会

[3-J-2-04] 地域医療連携における在宅医療・介護側からみた情報共有の現状-情報プライバシーへの配慮に焦点をあてて-

*新實 夕香理1、太田 勝正2、曽根 千賀子3、大竹 恵理子4 (1. 名古屋女子大学, 2. 東都大学, 3. 長野県看護大学, 4. 国立看護大学校)

Information privacy, Multidisciplinary cooperation, Regional medical cooperation network

【目的】本研究の目的は、地域の中核病院から提供される患者情報について、受け手である在宅医療・介護従事者からみた情報共有の現状と課題を明らかにすることである。
【方法】7都道県にある診療所、介護施設等に勤める医療者27名を対象に、病診連携時の情報交換における患者・家族の情報プライバシーについての認識、患者や家族による情報共有の範囲や相手の制限の経験について、インタビューした。逐語録を作成後、質問毎にコードを抽出し、類似性に着目して整理した。調査期間は2023年3月から10月までである。
【倫理的配慮】所属機関の倫理審査委員会の承認を得て実施した。
【結果・考察】参加者は医師・歯科医師13名、看護師9名、ケアマネジャー2名など計27名であり、平均で地域連携を約15年担当していた。中核病院から診療所に提供される患者情報は、診療情報提供書等を患者が持参、あるいはFAX、医師会からの郵送の形で受け取っていた。介護施設や訪問看護では、専門職間の情報連携に電子@連絡帳を主に利用していた。患者から情報共有の制限を求められた医師はいなかった。一方、患者は「自分の役に立つ情報をきちんと伝えて欲しいと思っている」のではという意見と共に、患者や家族から情報の共有範囲や相手に制限が求められた場合には、患者の意思を尊重したいとの語りがあった。ただし、在宅医療は多職種連携が基本であり、共有する情報の量や内容は治療内容やチームとして患者を診る体制に負の影響を与えることを危惧する声もあった。
 在宅療養患者や介護家族の多くは高齢者ということもあり、現在のところ、中核病院からの診療情報提供書等による情報共有に大きな問題は生じていないと考えられた。一方で、在宅医療や介護に携わる医療者に患者の情報プライバシーを尊重したいという考えもあり、必要な情報の共有と患者ケアの質とのバランスについて今後の課題が示唆された。
 本研究はJSPS科研費20K10618の助成を得た。