一般社団法人 日本医療情報学会

[3-J-3-05] U-Netを用いたCT画像におけるDISHの早期発見システム

*加藤 愛穂1、森川 大翔2、吉野 孝1、寺口 真年3、中田 朋紀4 (1. 和歌山大学 システム工学部, 2. 和歌山大学大学院 システム工学研究科, 3. 和歌山県立医科大学 整形外科, 4. 和歌山県立医科大学 救急集中治療講座)

U-Net, DISH, segmentation

【背景】DISHとは,脊柱前縦靭帯が骨化し脊柱の可撓性を低下させる疾患である.DISH自体が痛みを起こすことはないが,症状が進行すると,軽微な外傷が重度の脊髄損傷につながる.しかし,DISHは自覚症状がないため,患者が自ら受診することはほとんどなく,早期の発見が難しい.そのため,全身精査のために全脊柱CTを施行されることが多い,救急外来受診者のCT画像を利用する.【目的】本研究ではDISHを自動検出するシステムを提案する.自動検出を実現することで,専門家でなくとも簡便にDISHの診断が可能になり,早期にDISHを患者自身に知らせることができる.【方法】使用するデータセットは,撮像範囲が脊柱全体,胸椎,腰椎の3種類であり,各データセットの枚数は,脊柱全体が400枚,胸椎が245枚,腰椎が160枚である.すべて椎骨が明確に写っているものを選別した。このうち6割を訓練用データ,2割を検証用データ,2割をテスト用データとしてU-Netで学習,交差検証を行なった.正解画像には画像アノテーションツール「LabelMe」を用いた.評価には正解率,適合率,再現率,mean IoUの4つの指標を用いる.医療の分野では再現率が,画像処理の分野ではmean IoUが重視されるため本研究でもこの2つを重視する.【結果】脊柱全体,胸椎,腰椎の正解率,適合率,再現率,mean IoUについては,それぞれ脊柱全体が88.2%,85.4%,96.9%,80.3%,胸椎が90.5%,95.4%,87.2%,88.5%,腰椎が84.7%,87.5%,79.3%,78.6%であった.【考察・結論】 再現率とmean IoUが8割近くあったことから,高精度に検出できたと言える.誤検出のパターンとして,脊柱全体についてはDISHが検出されないことが多かったが,これは画像全体に対するDISHの面積が小さすぎるためだと考える.また,腰椎ではDISHでない箇所がDISHとして検出されることがあった.これは,DISHはCT画像では白く写るので,椎骨周辺の過曝部分と判断がつかなかったためだと考えられる.【倫理的配慮】 本研究は倫理審査委員会の承認を得ている.