Japan Association for Medical Informatics

[3-J-4-01] スマートグラスを用いた看護師向けの医療安全向上システムにおける医療機器認識モデルの精度評価

*Hizuki Yuba1, Takashi Yoshino1, Akinori Nishikawa2 (1. 和歌山大学システム工学部, 2. 和歌山県立医科大学付属病院)

Smart glasses, Nursing task support, Safety enhancement

【目的】
医療における課題として, 看護師の人手不足が挙げられる. 2025年問題により, 医療・介護の需要がピークを迎え多くの病院で看護師が不足する.看護師の人手不足は, 労働増加と疲労の蓄積を招きヒヤリハットが増加する. ヒヤリハット対策として指差し確認やチェックリストがあるが, 看護師一人での対応における医療事故防止手法は確立されていない.我々はハンズフリーで利用できるスマートグラスを用いて医療機器を認識し、清潔な状態を保ちながら注意事項を表示・確認するシステムを開発している.
【方法】
本研究では, YOLOv8を使用し模擬環境で撮影した画像データを学習と検証に用いた. 採用した医療機器は気管カニューレで, 学習データと検証データ合わせて2236枚を使用した. 評価はテストデータ731枚で行い, IoUが50%以上を正解とし, 適合率P, 再現率R, APを指標とした. 気管カニューレのみを学習したモデルとcocoデータセット事前学習済みモデルを比較した.
【結果】
気管カニューレのみの学習モデルは, 適合率Pが100%, 再現率Rが30%, APが61%であった. 背景が複雑な場合や物体の一部分が隠れている場合は認識率が下がった. 対して, cocoデータセット事前学習済みモデルは適合率Pが100%, 再現率Rが49%, APが71%で背景が複雑なときや一部分のみの認識もできたが, 誤検出が1枚あった.
【考察・結論】
適合率Pがどちらも高く誤検出は少ないが再現率Rは低く, 判別しきれなかった画像が多かった. 事前学習済みモデルの方が精度が高かった. 今後は, 一部分のみや背景が複雑なデータの学習を強化する必要がある.
【倫理的配慮】
倫理的配慮として, 患者のプライバシー保護を挙げる. 使用するデータは模擬環境で収集したものであり患者のデータは使用しない.