Japan Association for Medical Informatics

[3-J-4-03] インシデント予防対策を目的としたPDAを用いた患者認証率可視化公開による増加効果~差分の差分析を用いた病棟間比較~

*Kyoko Takaisi1,2, akemi tuji1,2, takuya kinosita3, haruka hukusima4, mayumi itou 4, tomomi ezoe1,5, takehiro matumoto2,3 (1. 長崎大学病院 看護部, 2. 長崎大学病院 医療情報部, 3. 長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 医療情報分野, 4. 長崎大学病院 医事課医療情報管理室, 5. 長崎大学病院 安全管理部)

personal digital assistant, Patient authentication, medical safety, Misidentification incident.

【背景・目的】当院では2008年よりバーコードリーダーによる3点認証を実施し、2015年からはPDA(業務用携帯端末)を用いた認証を主体としている。しかし患者誤認インシデントはなおも発生しており、2023年5月および11月に麻薬の患者誤認発生を機に可視化を目的とし、各病棟の認証率を公開した。本研究の目的は認証率の公開・可視化による増加効果を疑似実験の手法の一つである差分の差分析によって明らかにする。
【方法】個人情報が含まれない患者認証データを抽出したものをデータベースとして作成し、病棟別の麻薬服薬認証率を公開した2023年12月前後の2022年11月~2024年5月を調査期間とした。対象集団は2022年11月の認証率が30%未満の病棟とし、調査期間に患者誤認インシデントが起こった病棟をインシデント群、起こしていない病棟を比較群とした。なお評価時点に麻薬処方がなかった病棟は除外した。群間比較として院内公開前後(2023年11月および2024年5月)の平均認証率を用いて差分の差分析を実施した。解析方法としては平均の比較にwelchのt検定を用いて両側検定(有意水準.05)とした。
【結果】インシデント群は2病棟あり、比較群は5病棟であった。2022年11月時点の平均認証率は16.0% vs 13.4%(p ⁼.65)であったインシデント発生後の認証率は44.7% vs 18.9%(p ⁼.03)、院内公開時は71.2% vs 29.6%(p ⁼.09)、公開後(半年)は96.5% vs 43.9%(p ⁼.002)であった。公開後の認証率の各群の増加分は25.3%と14.3%であり、差分の差分析の結果インシデント群の方が比較群に比べて11%高かった。
【考察】差分の差分析によりインシデントを経験した病棟は比較群の病棟に比べて認証率可視化に伴う増加効果が示唆された。インシデントを経験していない病棟も認証率の可視化による増加効果は得られたが、インシデントを経験した病棟に比べると弱く、可視化のみではなく麻薬誤認インシデントによる損害に置き換わるような対策を検討する必要があると考える。