Japan Association for Medical Informatics

[3-J-4-05] 腎毒性薬投与後におけるAKI発症予測モデル構築の試み

*Yukinobu Kawakami1,2, Takuya Matsuda1, Haruki Takata1, Eizen Kimura1 (1. 愛媛大学大学院医学系研究科医療情報学講座, 2. 愛媛大学医学部附属病院薬剤部)

nephrotoxic drugs, acute kidney injury, machine learning

【背景】急性腎障害(AKI)は生命予後や臨床経過に影響を与えることが報告されており、その主要な原因の一つに薬剤が挙げられる。薬剤性AKIの早期検出と早期介入は、重篤な副作用を回避するために臨床上極めて重要である。そこで本研究では、機械学習アルゴリズムを用いて腎毒性薬投与後におけるAKI発症有無を予測する分類モデルの構築を試みる。また、重要な予測因子を特定・可視化することでAKI早期検出に関して新たな知見の獲得を目指す。このアプローチを起点に臨床現場での早期対応が可能となり、患者の安全性向上に寄与することが期待される。
【方法】愛媛大学医学部附属病院の診療記録を格納したデータウェアハウスを用いて、2011年10月から2023年9月にリポソーマルアムホテリシンB(L-AMB)を投与した患者を対象とした。AKIの定義は、国際的に統一されたKDIGO(Kidney Disease Improving Global Outcomes)基準に従いL-AMB投与後の血清クレアチニン値の変化量とし、目的変数にはAKIの発症有無、説明変数には患者背景や併用薬、検査値等の情報から特徴量選択を行い設定した。機械学習アルゴリズムにはXGBoostを用いて交差検証を備えたグリッドサーチにより最適化した分類モデルを構築し、重要な予測因子の特定にはSHAP(SHapley Additive exPlanations)を用いて可視化を行なった。
【結果】対象患者188名中、除外条件に該当しなかった患者は136名、このうち、AKIが発症した患者は50名(36.8%)であった。構築したモデルの性能は、ROC-AUC:0.66であった。重要な予測因子として、L-AMB投与量、併用薬(利尿薬等)、検査値(腎機能、電解質)が確認された。
【考察】L-AMB投与量は早期検出において重要であることが示唆された。本モデルは臨床現場における投与量の設定に寄与する可能性がある。今後モデルの精度を改善していくにあたり、データ数を増やす必要がある。利用可能な医療情報データベースや他施設共同研究について検討を行う。