一般社団法人 日本医療情報学会

[3-J-5-05] 360°カメラを利用した実習デモンストレーション動画に関する教育的効果の検証

*逸見 孝1、豊島 寛大2、稲田 政則3 (1. IMSグループ 株式会社アイル 板橋中央臨床検査研究所, 2. 東京医科大学病院 中央検査部, 3. つくば国際大学 医療保健学部 臨床検査学科)

360-degree Video, Technical Practice, Analytic Hierarchy Process

【目的】  360°カメラは動画共有サイトの興隆に伴い個人利用が広がる中,医療系教育での活用も散見される.我々は臨床検査教育における実習デモンストレーション動画を360°カメラで撮影し,その教育的効果について予備的な調査を行い,第16回日本臨床検査学教育学会学術大会(2022年)で発表した.試用後アンケートでは良好な回答が多かったものの,技術的到達度を高めたか否かは明らかではなかった.今回,実験条件を可能な限り統制し,あらためて教育的効果を検証した.【方法】つくば国際大学臨床検査学科1年生の比色実習向けに,Insta360社製 360°カメラ(動画A)とIPEVOブランドWebカメラ(動画B)でデモ動画を撮影した.実習の前後に各動画を視聴する機会を設けた.2つの動画のうち,実習前に視聴する動画はくじで割り当てた(実習後にもう1つの動画を視聴).実習成果である測定データ(同一試料の5回繰り返し)から技術到達度を評した.さらに,匿名でのアンケートから,階層化分析法(AHP)にて臨場感,疲労感,自己効力感を評価基準として2つの動画の一対比較評価を行った.【結果】技術到達度として,同意を得た23名(先に動画A視聴12名,先に動画B視聴11名)の測定データからCV1.2%未満を達成した者を抽出すると,各々6名および5名で有意差は認められなかった(p=0.83).アンケートには21名から回答が得られ,全員の回答の幾何平均で集団AHPを実施すると,評価基準の重要度は,臨場感0.41,疲労感0.17,自己効力感0.42で,総合評価値は動画Aが0.75,動画Bは0.25であった.【考察】実習前後に視聴する動画の種類によって技術到達度に差は見られなかった.例え視覚的な情報量が増えたとしても,技術の向上には事前のデモ動画視聴だけでは十分ではなく,実際に機材を使用した経験や感覚による習熟が必要なのかも知れない.一方,AHPの結果では,360°動画はWebカメラ動画に比べて3倍程度選好され,予備調査の結果とも整合し,教材としての優位性は明らかと言える.【倫理的配慮】本研究はつくば国際大学倫理委員会の承認(第 R05-16 号)を得て実施した.