一般社団法人 日本医療情報学会

[3-J-6-04] 北海道におけるCOVID-19パンデミック前後の主要疾患EBSMR変動

*趙 捷宇1、大橋 和貴1、杉村 直孝2、小笠原 克彦1,3 (1. 北海道大学 大学院保健科学研究院, 2. 北海道大学 大学院保健科学院, 3. 室蘭工業大学 大学院工学研究科)

EBSMR, Covid-19, Hokkaido area

背景:北海道の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行前後にさまざまな病因による死亡率の変化は、公衆衛生の状況を示す重要な指標である。北海道で死亡率が高い疾患には、悪性新生物、心疾患、肺炎、老衰、脳血管疾患がある。本研究の目的は、COVID-19前(平成30年)とCOVID-19パンデミック中(令和3年)の全死因死亡率およびこれら5つの疾患のベイズ補正標準化死亡比(EBSMR: Empirical Bayes Standardized Mortality Ratio)を比較し、COVID-19が各疾患の死亡率に与えた影響を考察した。方法:本研究は、北海道保統計年報で一般に公開されている北海道179市町村の死亡統計を用いた。研究対象期間はCOVID-19前の平成30年とCOVID-19パンデミック中の令和3年とした。EBSMRはベイズ統計手法を用いて小規模サンプルの効果を平滑化することで、より安定し信頼性の高い標準化死亡率を提供する。市町村ごとの頻度ヒストグラムおよび頻度マップを作成することで、北海道各地域の死亡率分布および変化傾向を分析した。結果・考察:全死因死亡率について、令和3年は平成30年に比べてEBSMRが1を超える地域が多かった。令和3年の肺炎死亡率EBSMRは平成30年より高く、空知地方ではそれぞれ2.24と2.03で、平成30年を大幅に上回っていた。老衰による死亡率の分布では、令和3年を上回る死亡率の地域の数は平成30年に比べて大幅に増加していた。心疾患と脳血管疾患では令和3年のEBSMRが高い地域が多かった。悪性新生物によるEBSMRの頻度分布については、両年の差異はあまりなかった。 令和3年は平成30年に比べ、多くの地域で高い死亡率を示し、医療資源の配分がCOVID-19関連の治療に集中し、他の疾患の治療において人手不足が生じた可能性がある。肺炎のEBSMRは令和3年で著しく高く、COVID-19の流行と関連と考えられた。令和3年の一部地域で老衰による死亡率が上昇した理由として、コロナに対する、医療需要の急増により、高齢患者のケアや治療が不足し、老衰の死亡リスクが増加したと考えられる。【倫理的配慮】該当しない。