一般社団法人 日本医療情報学会

[4-B-1-01] 政府が進める医療DXにおいて期待される糖尿病診療のデジタルヘルスの進歩と課題

*佐藤 直市1、山下 貴範1、中熊 英貴2、中島 直樹3 (1. 九州大学病院メディカル・インフォメーションセンター、2. 済生会熊本病院、3. 九州大学大学院医学研究院医療情報学講座)

PHR, ePath, Learning Health System

糖尿病は生涯疾患として健康・医療・福祉の社会保障システム連携による切れ目のない医療と患者が療養行動に取り組むことへの支援が望まれる。我々は政府が構築を進める全国医療情報プラットフォームに準拠したEHR-PHR連携基盤を2022年度に構築し、糖尿病をはじめとする慢性疾患ユースケースを含み、マイナポータルに接続し特定健診結果情報を連携するPHRアプリを開発・実証した。アンケート調査では90%の利用者よりアプリを健康増進のために積極的に活用できるとの回答を得られた。
一方、医療プロセスの管理モデルとして、時系列を持つ最小単位の診療行為をアウトカム・アセスメント・タスク(OATユニット)で層構造化したePathをベンダーを越えて標準化を進めた。ePathにより診療プロセスを迅速に可視化・解析し、パスの改訂による臨床現場へのフィードバックでLearning Health System (LHS)を通じ医療プロセスを改善できることを示してきた。2023年度には診療支援の促進のためePath上で電子カルテ上の糖尿病外来パス(以下 外来パス)とスマホ上の自己管理用パス(個人LHSアプリ)を開発し、相互に連携するための基盤を構築した。外来パスにおいて患者毎に個別に選択された生活習慣やライフログに関わるOATユニットは、個人LHSアプリと相互に連携することができる。患者はPHRへ入力した生活習慣情報を個人LHSアプリ上で病院検査結果と時系列で比較することができ、医療従事者も情報の共有と適切な助言を行うことで患者との円滑な信頼関係に繋がる。またePathによりLHSを通じた最適な糖尿病の診療プロセスの構築が可能となる。
新しい時代に向けて、患者が診療情報や健診情報・介護情報等とも連携したPHR上で長期にわたり使用できるユースケースを創出することが、デジタルヘルスの課題解決と発展に繋がると考えられる