Japan Association for Medical Informatics

[4-B-1-05] デジタル技術の進化による糖尿病診療の変革:臨床現場からの展望

*Yasutaka Maeda1,2 (1. Minami Diabetes Clinical Research Center, 2. Clinic Masae Minami)

Diabetes, Digital Transformation, Clinical Practice, Continuous Glucose Monitoring, Automated Insulin Delivery

現代の糖尿病診療は、デジタル技術の進化により「糖尿病DX(デジタルトランスフォーメーション)」を迎えている。特に、24時間365日の血糖モニタリング(CGM)が精度の高い血糖管理と新しい知見をもたらしている。最近は、インスリン投与を自動制御するAIDシステムやインスリン注入履歴を自動記録するコネクティッドインスリンデバイスも登場している。今回は、デジタル技術が血糖管理と糖尿病の重症化予防に与える影響を臨床現場から考察する。
患者側では、スマートフォンや健康記録装置が普及し、健康管理に積極的に関与できるようになったことで治療効果が向上した。医療提供者もパーソナルヘルスレコード(PHR)に集約された健康情報を活用し、患者の日々のデータに基づいた分析による治療計画を立てることによって最適化されたケアを提供することが可能となった。
また、インスリン注入履歴をPHRに導入することで、患者は血糖管理を主体的に行い、医師との情報共有が容易になる。一方で、データの肥大化により診療時間が増加しているが、ローコード技術の進歩により、データ管理と分析が内製化され、迅速かつ正確な治療計画が可能になる。当院では、Pythonを用いたCGMデータの管理・分析ソフトウェアを開発し、治療の有効性や患者の生活習慣に関する洞察を深めている。
今後は、デジタル技術の普及により、患者は健康状態をリアルタイムでモニタリングし、ライフスタイルや治療計画を適宜見直せるようになることが期待される。デジタル技術が医療分野での革新を促し、健康と生活の質の向上に貢献することが期待される。
一方で、このような技術革新を享受できる者とそうでない者の格差が現れ始めた。糖尿病DXの普及を阻む課題についても考察を深めたい。