一般社団法人 日本医療情報学会

[4-B-4-05] 災害時の患者支援のためのシステム構築の試み
-LINE公式アカウントの活用-

*西田 健朗1、安西 慶三2 (1. 熊本中央病院、2. 医療法人社団 高邦会 高木病院)

災害時には携帯電話による音声通話は繋がりにくく、インスリン依存状態の患者さんの安否確認ができず、適切なタイミングでインスリンの提供などの支援ができない事が想定される。実際に、熊本地震前後の熊本県国民健康保険のdataによると、糖尿病ケトアシドーシスによる入院が、前年同時期の4.7倍に増えていたことから、急性期にインスリンが不足して、高血糖になってしまったインスリン依存状態の患者が一定数いたことを表している。そこで、このような事を起こさないようにするために、JADECは、SNSの中でも全年代の利用率が92.5%と言われているLINEを用いて、システム構築を行っている。JADECではLINE公式アカウントを取得し、平時には、JADECのイベントや、糖尿病に関するお役立ち情報を定期的に流す。災害発生時には、JADEC事務局でリッチメニューを災害モードに切り替えて、「インスリン製剤を持ち出せなかった方 専用 連絡フォーム」を選択できるようにする。被災された方で、インスリンを持ち出せなかった方は、この連絡フォームをクリックすることで、必要なインスリンの種類や、インスリンの届出先住所または地図をJADEC事務局に送信することが可能となる。JADEC事務局では、この情報を被災地のDiaMATに伝達し、薬局、卸と連携して、インスリンを必要としている患者に必要なインスリンを届けることができるようになる。このシステムは、7月下旬より運用を開始しており、9月1日には、実際にこのシステムを活用して、災害訓練を行った。災害訓練には87名が参加し、アンケートでは、「災害時のインスリンをどう手配すれば良いかをずっと心配していたので、今回の訓練が安心材料になりました。」という声があった一方で、位置情報の送信方法や、メッセージの文言が難しいといった声もあった。今後、LINEのシステムや、JADEC事務局の運営体制などを修正し、いざという時に、本当に役立つシステムとして行く予定である。