一般社団法人 日本医療情報学会

[4-C-2-04] 医薬品臨床研究における病院企業連携した連合分析の実践と課題

*井上 真吾1 (1. 株式会社Yuimedi)

複数拠点でのデータ分析を実現する連合分析において、共通データモデル(CDM)の整備が必要である。しかしCDMの整備にはコストが伴うためその費用対効果がしばしば問われる。データの前処理や語彙の標準化といったCDMの整備に関する技術的およびコスト課題に対し、株式会社YuimediではHL7®︎ FHIR®︎からOMOPへのデータ変換技術を開発し低コストでCDM整備を実現するシステムの導入を推進しているが、コードマッピング表の整備など産学連携を通じた対応が求められる課題も残されている。米国、欧州、韓国においてOMOPの導入に際し大規模な助成金が提供された事例がある。このような支援によって費用負担が軽減され、施設導入が加速されると考えられる。
連合分析および連合学習の活用可能性として、医療機関の視点から地域医療連携に着目する。施設別の患者特性をルールベースで分析・可視化・共有し、個別患者の特性と照らし合わせることで、患者紹介を能動的に行うことも可能となる。さらに機械学習への応用可能性についても検討する。例えば、希少疾患の特徴を機械学習させ、その特徴を多数有する患者を見つけ出すことで、専門医へのアクセス向上に貢献する可能性を考える。この事例を通じて、OMOPは観察研究に限定されず、実臨床にも資する可能性について論じる。このようなデータ利活用の取り組みにより、展望として医療機関と製薬企業が連携するプロジェクトへの発展が考えられる。また、費用対効果の見込める施策と共にCDM整備を推進することで学術的な大規模連合型ネットワークの構築にも貢献できると期待される。
本ワークショップでは、CDM整備にかかるコストと課題について検討し、希少疾患における未診断患者探索の事例を通じ、連合分析および連合学習の応用可能性を詳述すると共に連合分析のためのCDMの社会実装に向けた具体的な方法論を議論する。