一般社団法人 日本医療情報学会

[4-D-3-04] 臨床試験における生成AIの活用の可能性

*浅野 健人1 (1. 大阪大学医学部附属病院)

Generative AI, Clinical Trial, Document generation

OpenAI社が開発したChatGPTに代表される大規模言語モデル等の生成系AI技術(以下、「生成AI」という)による技術革新が生まれ始めている。それらはビジネスの現場にも活用されつつあり、仕事のやり方も変わりつつある。これらは臨床試験の現場でも少しずつ活用が始まっている。
大阪大学医学部附属病院では、令和5年度厚生労働省特別研究として、臨床研究や治験における関連文書作成への生成AI活用の可能性を探索した。取り組んだテーマは以下の3つであった。
テーマA:プロンプトからプロトコルの自動生成
テーマB:説明文書の平易化による理解力の向上
テーマC:電子カルテからの自動情報抽出の精度
方法として、テーマAでは生成AIソフトウェアを用いて研究プロトコルを作成して、アンケートによる外部評価を行った。テーマBでは生成AIで説明文書を平易化し、ネットパネル調査を行った。テーマCでは電子カルテデータを用いて模擬研究CRFの自動入力と適格者判定を検証した。
結果として、テーマAではRAGモジュールの活用により、生成内容の品質と正確性が向上したが、文体や表現の一貫性、内容の整理と明確化、倫理的配慮と同意手続きなどで、改善すべき点が存在することが明らかになった。テーマBでは平易化した文書により、全体的な理解度が向上したが、50-70代ではかえって低下する傾向が示唆された。テーマCでは自動入力で99%超の精度を示したが、誤った情報が生成されることも確認され、生成AIによる判断根拠を明確に提示しそれを容易に確認できる必要があると考えられた。
今回の取り組みにより、臨床試験における生成AI活用の有用性と課題が明らかになった。