一般社団法人 日本医療情報学会

[4-E-2-01] Learning Health Systemの事例-ePathデータ解析から派生したリスクスコア開発-

*松本 晃太郎1,2、藤 沙織1、德永 晃己2、髙宗 伸次2、管田 塁2、中熊 英貴2、小妻 幸男2、野原 康伸3、山下 貴範4、若田 好史5、岩谷 和法6、副島 秀久2、中島 直樹7,4、鴨打 正浩1 (1. 九州大学大学院 医学研究院 医療経営・管理学講座, 2. 済生会熊本病院 医療情報調査研究所, 3. 熊本大学大学院 先端科学研究部, 4. 九州大学病院 メディカルインフォメーションデンター, 5. 徳島大学大学院 医歯薬学研究部 医療情報学分野, 6. 済生会熊本病院 呼吸器外科, 7. 九州大学大学院 医学研究院 医療情報学講座)

Prolonged air leak, Prediction model, Video-assisted thoracic anatomic pulmonary resections

【背景・目的】我々の研究チームは, これまでにePathデータを活用した胸腔鏡下肺切除術パスの解析により, 在院日数の延長要因として術後肺瘻を特定したこと, 同時に不要なパスのアセスメント項目の削減を行い医師の働き方改革に寄与したことを報告してきた. 本研究では, Learning Health System(以下, LHS)の2周目として, 1周目の結果から派生した術後肺瘻のリスクスコア開発に至った一連の流れを報告する.【方法】2017年4月から2023年4月までに済生会熊本病院に入院し, 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術を施行した733名(70.3±9.2歳、女性41.1%)を解析対象とした. 目的変数として, 5日を超えて胸腔ドレーンより気漏が持続したものを遅延性肺瘻と定義した. 説明変数にはePathデータに加えて術前肺機能検査や術中因子を用いた. まず初めにXGBoost(eXtreme Gradient Boosting)と機械学習の解釈性手法であるSHAP(SHapley Additive exPlanation)を用いてリスク因子の探索及びカットオフ基準の選定を行った. 続いて選択された予測因子を用いて, ロジスティック回帰モデルを構築し, 標準化偏回帰係数を基にリスクスコアを算出した.【結果】研究対象期間に遅延性肺瘻は86例(11.7%)発生した. 最終的なリスク因子として, COPD有, %肺活量が70未満, BMIが18.5未満, 手術時間200分超えが同定された. 最終的に構築したロジスティック回帰モデルに対してHarrellのバイアス補正法を施した後のAUROCは0.72であった. 【考察・結語】本研究ではePathデータ解析から派生したLHS2周目の結果を提示した.大規模な胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術を施行した集団に対して機械学習により術後肺瘻の予測を行ったDivisi等の研究では, バリデーションコホートに対するAUROCが0.63と報告されているが, 我々のモデルの精度はそれを上回った.今後, 開発したリスクスコアにて高リスクと判定され, かつ術後に気漏が生じている症例には早期に癒着療法を実施し, 遅延性肺瘻の減少及び在院日数短縮の検証を行う.【倫理的配慮】本研究は、済生会熊本病院倫理審査委員会の承認を得ている。