Japan Association for Medical Informatics

[4-E-2-05] トラジェクトリー解析を用いた1年間の歩数軌跡と体重減量への影響

*Kenshiro Taguchi1,2, Asuka Oyama1, Jun’ichi Kotoku1,3, Hiroshi Toki1, Ryohei Yamamoto1 (1. 大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター, 2. 帝京大学大学院医療データサイエンスプログラム, 3. 帝京大学大学院医療技術学研究科診療放射線学専攻)

Trajectory Analysis , Latent Class Mixed Models, Step Count Data, Weight Loss, Mobile Healthcare Apps

【目的】歩行は、日常的な身体活動の一つとして挙げられる。身体活動量の増加は体重の減量を促し、ひいては生活習慣病などの改善につながる。また近年にて、モバイルヘルスケアアプリの使用により、継続的な歩数データの蓄積が可能となった。だが、長期的な歩数変動と体重減量の報告は少ない。本研究では、大阪府運営のモバイルヘルスケアアプリ「アスマイル」にて取得された 1 年間の歩数軌跡による減量効果を解析した。【方法】本研究では、2019–2022 年度に特定健診を受診した 30–70 代のアスマイル会員を対象とする。そのうち、BMIが 25以上で、特定健診受診日から歩数が10–14ヶ月間継続的に記録されており、かつ毎週 1 日以上データを保有する 1,947 名を解析対象とした。日々の歩数は、スマートフォンの標準的ヘルスケアアプリから自動連携および記録された。トラジェクトリー解析 (Latent Class Mixed Models; LCMM) を用いて、1年間の歩数軌跡をクラスタリングした。その後、歩数記録開始から1年後の特定健診を確認し、3%の減量の有無を応答変数、歩数軌跡クラスを説明変数としたロジスティック回帰を実施し、各歩数軌跡クラスのオッズ比を算出した。【結果】解析対象者 1,947 名のうち、男性は42.2%、平均年齢は 64.9±8.0歳であった。LCMMにより、1年間の歩数記録は歩数増加群、定常群、減少群、増減群の4クラスに分類された。また、4クラス間にて年齢差、体格差の統計的有意な差は確認されなかった。その後、ロジスティック回帰により、歩数定常群に対して、歩数増加群の調整済みオッズ比は 2.52 (95%CI: 1.65–3.81)、歩数減少群では 0.70 (95%CI: 0.43–1.08) であった。【結論】大阪府営のヘルスケアアプリ「アスマイル」によって長期的な歩数データの追跡が可能となり、1年間の歩数軌跡からその後の体重減量への寄与が明らかとなった。今後、継続的な活動量増加による健康増進、さらには疾患予防への貢献が期待される。【倫理的配慮】本研究は本センター倫理委員会の承認を受け実施しており、すべてのデータは大阪府によって匿名化され、個人が特定できない状態で提供されている。