一般社団法人 日本医療情報学会

[4-F-2-01] 北海道におけるNICU病床の適正配置に向けた病床使用率の将来推計

*大橋 和貴1、藤原 健祐2,1、谷川 琢海3,1、小笠原 克彦1,4 (1. 北海道大学大学院 保健科学研究院, 2. 小樽商科大学大学院 商学研究科, 3. 北海道科学大学 保健医療学部, 4. 室蘭工業大学大学院 工学研究科)

Neonatal intensive care unit, Geographic information system, Geographic analysis, Resource allocation

【目的】Neonatal intensive care unit(NICU)の全国的な整備は新生児や乳児の死亡率の低下に貢献してきた。2020年時点で、NICUは352施設、3394床が稼働している。これは1万出生あたり40.4床であり、第3次少子化社会対策大綱の目標値25床―30床を大きく上回っている。しかし、目標を達成していると言える一方、今後も出生数の減少が確実視される状況においては、NICU病床の過剰供給と非効率な運用が懸念される。なかでも、北海道は人口減少が顕著であることや都市間の距離が遠く、医療資源が分散している地域であるため、効率性と公平性のバランスを考慮した医療資源の配置を要する地域である。そこで、本研究では出生数減少社会におけるNICU病床数の管理に資する情報を得ることを目的に、地理情報システム(GIS)を用いて現在および将来の北海道におけるNICU病床の配置について検討した。【方法】対象は北海道の二次医療圏とし、GISを用いてNICUを地図上にプロットした。次に、2025、 30、 40、 50年の推計人口と人口分布に基づいて年間の出生を仮想的に発生させ、カバー容量最大化問題により総移動時間が最小化するようにNICUに割り当てた。NICU病床数を40、50、60床(対1万出生)と変化させ、各NICUに割り当てられる出生数を集計し、病床数あたりの出生数を予測病床使用率と定義して比較した。【結果】現在の状況に近い50床(対1万出生)を想定した場合、2025年から50年の予測病床使用率は札幌、十勝医療圏は90-100%で推移した。西胆振、上川中部、釧路医療圏では予測病床使用率が低くかつ経年で低下傾向を示し、特に釧路医療圏は2025年で約50%、2030年以降は50%を下回った。【考察・結論】本手法により、将来の人口変化に応じたNICUの使用率を推計した。予測病床使用率が低い医療圏ではNICUが過剰となる可能性があり、効率性の低下や症例数の減少による教育・経験の減少や医療の質の低下が懸念される。質の高い医療体制の維持に向けた集約化の必要性が示唆された。【倫理的配慮】該当しない。