一般社団法人 日本医療情報学会

[4-F-5-06] NDI(Network Device Interface)Toolsを用いた移動診療におけるWAN環境での聴診音のリアルタイム伝送

*大佐賀 敦1、近藤 克幸2 (1. 東北医科薬科大学医学部, 2. 奥州市国民健康保険衣川診療所)

Telemedicine, Auscultation, Network Device Interface

【背景・目的】医療機器と通信機器を搭載した専用車両による遠隔診療では、ビデオ通話と医療機器のデータ送信が必要である。なかでも聴診音にはリアルタイム性と高音質が求められるため、放送などで使用されるNDI規格を用い、ビデオ通話と独立かつ同時利用可能な劣化の少ない聴診音伝送の仕組みを構築・実装した。
【方法:システム概要】診療車・医療機関(診察室)ともにWindows 11 PCとNDI Tools 5.6で構成した。診療車からは、Screen Capture HXを用いて電子聴診器の音および波形画像を送信し、診察室ではStudio Monitorで受信する。診療車と診察室間の通信は、携帯電話が利用できない山間部での運用を考慮し、携帯キャリアおよび衛星インターネットでIPsec VPNにより構成した。
【結果:機能評価】まず、診療車と診察室を想定したPCを1000BASE-TでLAN接続し、音質を確認した。実際の遠隔診療はWAN環境のため、通信帯域が減少した際の動作を検証した。同一回線でビデオ通話と聴診音送信を行った場合、ビデオ通話が通信帯域を占有し、聴診音の通信帯域が不足するため、聴診音が途切れる事象が確認された。これに対し、ビデオ通話の帯域のみ選択的に最大1Mbpsに制限することで、ビデオ通話と聴診音の両者を、品質を保ちかつ途切れず使用できる構成を実現した。さらに、聴診中の映像を差分が生じない静止画像にすることで、聴診音の通信帯域が数百kbpsに抑えられることも確認できた。
【考察・結論】今回構築したシステムにより、十分な通信帯域が得られない環境でもビデオ通話と聴診音を伝送でき、山間部等の僻地での遠隔診療の実証においても有用性が確認された。
【倫理的配慮】本構築は奥州市モバイルクリニック(遠隔診療サービス)事業で行われ、一連の通信評価はテスト用の環境およびデータにより行われた。