Japan Association for Medical Informatics

[4-G-3-05] 移植外科における業務効率化と臨床情報収集の両立のためのデータベース構築

*Shoichi Kageyma1, Etsuro Hatano1 (1. 京都大学医学部附属病院 肝胆膵・移植外科)

Transplantation, Perioperative management, Database, Surgery

【目的】肝移植は現在、終末期の肝不全に対する唯一の救命手段であるが、それゆえ術前状態が深刻な状態であり、手術時間は長く、いまだに周術期合併症は多い。また術後慢性期となっても拒絶や感染などの合併症が起こり得るため術前からの厳重な評価、および術後長期にわたる緻密な術後管理が必要である。多数の肝移植患者を抱える当院では安全で継続的な医療を主治医団だけではない複数の科の医師、さらにはコーディネーター、薬剤師を含めた他職種でのチーム医療により実現している。チーム医療にはコミュニケーションが肝要である一方、必要となる時間、労力が大きくなってしまうのも事実である。また継続的な質の向上を続けるには客観的なデータの集積、および解析が必要であるが、電子カルテ上で画像や検査データ、バイタルなどの構造化データの集積は容易であるものの、治療方針、手術手技、合併症の有無などの非構造化データの収集には特定のフォーマットの設定が必要である。本研究では肝移植における統一的なデータベースを構築することで、肝移植におけるチーム医療の効率化を図ると同時にそれらによるデータの解析を可能とすることを目標とした。
【方法】本研究ではコーディネーター、医師、看護師の扱う情報を中心に非構造化データのフォーマットを形成し、構造化データと統合した情報共有の効率化、解析容易なデータベースの作成を行った。具体的には患者の紹介から、移植適応の判断、手術、術後経過、退院までの期間を対象とし、電子カルテ上のフォーマットの形成、構造化データの自動収集と連動する業務補助ツールを作成した。
【結果】電子カルテに連動したアプリケーションをベースに、コーディネーター室に届く診療情報の確認時点から、移植適応のアセスメント、手術、合併症の評価、転帰までのフォーマットを形成し、そこから手術予定表が作成できるシステムを作成した。タブレット端末を用いた患者問診情報が直接電子カルテに転送され、入院時点からバイタル、主要血液検査、ドレーン排液量等などの構造化データを電子カルテから抽出を行うシステムを作成した。これらの構造化データとフォーマットによる非構造化データ両者の統合を行うことで業種をまたいだ情報のみえる化を実現した。患者問診タブレットは外来の待ち時間に患者側で生活習慣や治療歴、フレイル、高齢者の心理学的評価についてのスクリーニング項目を入力すると即時的に電子カルテ上に反映されるため外来診療の時間短縮に貢献している。また学会のデータ報告、施設のデータベース作成上における時間短縮、データエラーの回避などを実現している。フォーマット入力系式とすることで、施設における診断、手術手技、治療の標準化をもたらしている。
【考察・結論】肝移植においては当科で診療する他疾患と比べてはるかに大量の構造化データを扱っている上非構造化データも多いため医療DXが進んでいるとはいえそれらのフォーマット作成には各部署の意見の調整が必要でありそれこそがチーム医療の時間、労力の効率化と直結すると考えられた。本研究は関連する業種を限定し、患者の退院までの経過を中心に診療補助ツールの導入を行った。移植患者の退院後の経過は長く今後は薬剤科、栄養科などの職種とのデータの共有と外来診療の効率化、長期アウトカムのデータ集積までを中心とした診療補助ツールの追加導入が望まれる。
【倫理的配慮】本報告においては倫理的配慮は不要と判断できる。