一般社団法人 日本医療情報学会

[4-H-2-01] デジタルヘルスと健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health: SDH)の関連:文献レビュー

*青木 美和1、大江 和彦1 (1. 東京大学大学院医学系研究科)

【背景】情報技術の進展により、個別最適化されたデジタル健康支援・疾患管理が可能となってきた。しかし、その恩恵を享受しにくい集団や特性の可能性が指摘されている。本研究は、デジタルヘルスと健康の社会的決定要因(SDH)の関係に関する既存の知見をまとめ、さらに課題を明らかにすることを目的とする。【方法】PubMedを用いて、過去3年間に発表された英語論文を対象に検索を行った。検索語には “Digital Health”、“Social Determinants of Health”を用いた。本テーマに関連のある論文を選択し、内容分析を実施した。【結果】最終的に28件の論文を分析対象とした。主に3つのテーマに分類された。①デジタルとSDHの相互作用:社会経済的要因がデジタルヘルスツールへのアクセスやデジタルリテラシーに影響を与え、既存の健康格差を拡大することが指摘された。デジタル的決定要因についても研究がされ、デジタルヘルスにおいて排除のリスクがある集団のフレームワークが提案された。②データの質とバイアス:デジタルヘルスデータが特定のコミュニティを十分に反映していない可能性や、アルゴリズムにSDH関連のバイアスが含まれる危険性が指摘された。③SDHデータの活用:SDHデータを活用してデジタルヘルス介入の潜在的な効果を予測するアルゴリズムの開発がなされている。デジタルヘルスを含む医療の質向上のためSDHデータの活用が進められているが、電子カルテへの十分な記録がなく、構造化が課題である。テキストデータからのSDH情報抽出に自然言語処理が有効であり、大規模言語モデルの活用も期待されている。【考察】個別最適化されたデジタルヘルスにおいてSDHへの配慮が不可欠である。今後、デジタルヘルスにおけるSDHの影響の定量的評価や、SDHを考慮したデジタルヘルス介入の効果測定が課題である。