[4-H-2-04] 運動器領域での個別最適化 -IoT を用いて-
運動器疾患では、手術~運動支援まで、扱う領域が広いのが特徴である。現在、エビデンスを用いた個別最適化という領域で、さまざまな試みが進行している。取り組みのいくつかをご紹介し、デジタルヘルスツールを用いた課題を提示する。1.個別医療につながる運動器疾患の治療と運動アプリ 変形性関節症では人工関節置換術が多く行われる。従来、人工関節は術中にガイドを基に設置するが、その最適な設置位置は術者の感覚に頼る部分も多くあった。近年では、正確な設置をサポートする術中支援ロボットなどを使用することも多い。そこで蓄積されたデータを基に、よりよい関節バランス、設置位置などの精度を上げた提案が可能となる。さらに、術前術後に連動するアプリを利用し、術中データと術後データを突合して解析し、最適な手術、つまり逆算した個別最適化手術を行えるようなシステムを目指す例もある。2.デジタルヘルスを用いた身体機能の改善への試み 一般的に、ウェアラブルなどのデジタルヘルスを用いた身体機能への改善は、介入効果が弱いとされる。理由として、そもそもアプリ研究の参加者は継続率が悪いとされること、運動疾患に関するアプリが行動変容に関しては質が悪いものが多いという報告があること、さらに、アプリに関わらず、運動の継続が非常に困難であることなどが挙げられる。継続を高めるためには個別最適化された運動/フィードバックの双方が必要であろう。また、身体機能の膨大なパラメータの中で、何をどのように測定するかも定まっていない。例えば、指標として汎用される歩行速度は、我々の研究では、病院で測定した場合と、実際の生活で測定された速度は相関があるものの異なった。この結果は、歩行機能評価の難しさと、日常生活歩行速度を計測できる技術の成熟と標準化の必要性を示唆する。運動器疾患においては、何を個別化医療のゴールとするかの議論が今後必須と考えられる。
