[4-I-4-01] 擬似的な心電図波形を生成するための波形最適化の研究
ECG, pseudo data, lognormal distribution
【目的】数式・数理モデルによって生成された擬似的な生体データには、プライバシーリスクを回避できる等の利点がある。心電図波形では微分方程式を用いたモデルやガウス関数の線形和を使ったモデルが提案されている。しかし、 非対称的な波形を構成するために多くのパラメータが必要で、フィッティングによる数理モデルの構成が困難である。本研究では疾患を有さない成人の心電図について、ガウス関数以外の関数を使ってパラメータを減らし、微分方程式を回避した波形の構成を試みる。 【方法】我々は、心電図波形の生成を、一周期(P波〜U波)の波形のモデル化とR-R間隔のモデル化の2つの課題に分割し、公開されている心電図波形データから一周期の波形をモデル化を試みた。具体的には下記の方法にて構成を試みた。・時系列の数値分布の中央値が0になるように基線を設定し、R波のような電位の絶対値が大きな波形の影響を強く受けないようにした。・極小解を回避し、安定・確実にパラメータを最適化するため、一周期の波形を、基線を基準として正の値を取る部分と負の値を取る部分に分割した(これをここでは分割波と呼ぶ)。・各分割波について、少ないパラメータ数でモデルを表現するため、対数正規分布のパラメータμを0に固定し、縦軸方向のスケールと時間軸方向に平行移動の自由度を加えた関数(対数正規型波形)を定義し、最小二乗法でパラメータを決定した。・決定された対数正規型波形の線形和で心電図の一周期の波形をモデル化した。・結果に若干のガウシアンノイズを加えてリアリティを与えた。公開心電図データとしては、The PTB Diagnostic ECG Databaseから"control"のラベルがついた80個の波形を利用した。【結果】生成された波形はII誘導とV誘導について、医師が確認して本物の心電図と区別がつかない擬似的な心電図波形を生成できたと確認した。【考察・結論】一つの分割波(非対称波形)を表現するために、正規分布を基本とすると6パラメータが必要である。しかし本提案では対数正規型波形を基本とすることでこれを3パラメータまで減らし、最適化の安定性を確保した。本方法は疾患を有する心電図においても容易に拡張が可能である利点があるため、今後は疾患を有しない心電図のパラメータ範囲、および各疾患に応じたパラメータ範囲の探索を行う。【倫理的配慮】本研究はインターネット上で公開されている匿名化データのみを用いたもので倫理審査が必要な研究に該当しない。
