Japan Association for Medical Informatics

[4-I-4-03] 脳梗塞患者における医療連携の実態可視化および構造評価:レセプトデータベースを用いたネットワーク構造モデル開発の試み

*Tomoki ISHIKAWA Ishikawa1, Akihito Kako2, Hiromasa Yoshimoto2, Junko Hattori2, Kazuo Goda2, Naohiro Mitsutake1 (1. 一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構, 2. 東京大学 生産技術研究所)

Patient-sharing network, Administrative claims database, Network analysis

【背景】 将来的な医療需要の変化に限られた医療資源で対応するため、連携による資源効率的な医療提供体制の構築が重要課題である。しかし、医療提供体制を連携の視点から分析する手法は確立されておらず、実態に基づく議論は困難である。本研究は、レセプトデータを用いて、連携をネットワーク構造で捉え評価することで、実態に基づく客観的な政策議論を促進する新たな手法論の開発を目的とする。
【方法】 一県の外来レセプトデータ(2018年から2021年の9月分)で、脳梗塞を主病名とするレセプトを有する患者を対象とし、各患者の診療情報提供料など連携関連の加算を伴う複数医療機関受診を“連携”として同定した。ここで、連携元/連携先となる医療機関を頂点とした有向グラフデータを作成し 、連携ネットワークモデルとして可視化した。更に、このモデルを用いてネットワーク構造評価指標である密度・相互性の算出、および中心性に基づくクラスタリングを行い構造の経年変化を評価した。
【結果】 2018年から2021年で、脳梗塞患者全数に対する連携患者の割合は、8.63%(1,073名/12,430名)から8.86%(943名/10,645名)へ増加した一方で、連携に関わる医療機関数は1,685から1,563へと減少した。密度は0.615から0.711へ、相互性は7.627から8.921へ増加した。クラスタリングの結果、9つのサブネットワークが特定され、この構造に経年変化は認められなかった。
【考察】 連携割合が増加した一方、連携全体に関わる医療機関数は減少していた。これは連携需要の増加と、その需要増に対し各医療機関が連携機関数を増やすことで対応した可能性を示唆しており、密度の増加もこれを支持する。また、相互性の増加やクラスタ数が不変であったことから、双方向連携の増加や、サブネットワーク内で対応が図られたことが示唆される。