[4-I-4-06] 説明可能なAI技術point-wise linear modelを用いた子宮頸がん患者における将来の医療費予測と治療パターン分析
Explainable Artificial Intelligence, Cervical Cancer, Medical Care Expenditure
【目的】日本の医療費は年々増加しており,その抑制が重要な課題となっていることから,医療費に関する各種分析が精力的に行われている.本研究では,患者ごとにオーダーメイドされた回帰係数ベクトルを保持可能なpoint-wise linear model (PWL)という手法を確立することで,大規模なレセプトデータを対象に,将来の医療費予測および予測と関連のある治療パターンの同定を簡便に行うことを可能にした.本手法の有効性を検証するために,子宮頸がん患者における医療費と治療パターンを分析した.【方法】分析には日本システム技術(株)が提供するレセプトデータベースREZULTを使用した.対象患者は2013年11月から2018年10月のレセプトに子宮頸がんに関する傷病名が記録された8,296名とした.特徴量には診断後1年以内に行われた治療,および検査情報を使用し,目的変数は診断後2年目以降にかかった医療費を3値に分類して使用した.PWLで予測モデルを構築し,5-fold cross validation (CV) で性能を評価した.PWLが保持する患者ごとの回帰係数ベクトルにk-means法を適用してクラスタ分析を行い,医療費予測と関連する治療パターンを分析した.【結果】5-fold CVでの検証時ROC-AUCは0.79であった.PWLが保持する患者ごとの回帰係数ベクトルを用いたクラスタリングにより,子宮頸がん患者は3つのクラスタ (A, B, C) に分類された.クラスタAは,診断後1年以内にオピオイド処方や腹腔鏡手術を特徴的に受けていた.同様に,クラスタBは開腹手術,クラスタCは抗がん剤や放射線治療を特徴的に受けていた.【考察・結論】PWLを用いたクラスタ分析の結果から,クラスタAはIA期もしくは終末期,クラスタBはIB期もしくはII期,クラスタCはIII期もしくはIV期の患者がそれぞれ特徴的に集まっていることが示唆され,本手法により医療費の観点で妥当なクラスタに分類された.電子カルテデータへ応用すれば,合併症・重症度などの臨床情報に基づき,より精緻な医療費予測と治療パターン分析が可能になると考える.
