Japan Association for Medical Informatics

[4-J-3-01] 病院における長距離Wi-Fi規格 “802.11ah” の可能性

*Takahiro Nakahara1,2, Eishun Sudo2,1 (1. 京都医療センター医療情報部, 2. 京都大学医学部附属病院医療情報企画部)

802.11ah, Wi-Fi HaLow, LPWA, Hospital Information Network System

〇はじめに
IEEE 802.11ahは2017年に規格が標準化され、本邦では2022年の電波法令改正の後、製品が販売されている。同規格は“Wi-Fi HaLow”と呼ばれるようにWi-Fiの一種であり、またLPWA(Low Power Wide Area)に分類されている。ネイティブにTCP/IPを取り扱うことができ、長距離省電力の伝送を実現している。920MHz帯の特定小電力無線局であり、無線局免許を必要としない(技適機)。スループットは数Mbps(最低150kbps)と低いものの、条件によるが通信距離は1km以上とも言われ、IoTをはじめとした用途に期待が寄せられている。今回、病院における同規格の可能性について検討を行う。

〇方法
国内で発売されている同規格のアクセスポイント(AP)およびブリッジ装置を用い、居室内机上と当院病棟での通信状態及び速度等の試験を実施した。①既存医療情報システムの端末側に同規格のAPとブリッジを介した実際のユースケースに準じた構成と、②スタンドアロンで通信速度を測定する構成の2つを用意した。

〇結果
同規格はTCP/IPネイティブであるが、特定小電力無線局として送信時間の制約があり、伝送データの欠落や遅延の可能性がある。①では電子カルテのログインに失敗し、Webアクセスも不安定であった。そのため現用システムのネットワークに対し、そのままでは適用できないことがわかった。②による病棟での通信試験では1.03~1.25Mbpsのスループットが得られ、APから50m離れた病室の奥でも安定してターミナル操作(CUI)を実行できた。

〇考察
同規格は長距離伝送に優れているものの、病院でのWi-Fi5/6/7の置き換えには相当の工夫が必要である。一方、医療機器等の運用・管理やバイタル測定値入力など、低ビットレートで済む用途に対しては、一定の適応があると考えられた。