Japan Association for Medical Informatics

[4-J-4-01] 福島県脳卒中発症登録システムの構築と運用

*Hironori Nakano1,3, Tomoki Yoshida2,3, Mitsumasa Umesawa4, Jun Sakuma5, Gen Kobashi 4, Seiji Yasumuea1, Tetsuya Ohira1,3 (1. 福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター, 2. 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 3. 福島県立医科大学, 4. 獨協医科大学, 5. 寿泉堂綜合病院)

Medical Informatics, Stroke Registry, Cardiovascular disease

【背景と目的】
 福島県内における脳卒中発症の要因検討し、福島県における東日本大震災後の脳卒中の推移と震災の影響を検討することを目的として、2013年から福島県内の医療機関において脳卒中発症登録を開始した。
 2013年に引き続き、2018年、2023年と継続して調査を実施している。当初は医療機関での採録は紙の調査票への転記によるーものであったが、ファイルメーカーをベースとした採録システムを開発し運用を始めた。2018年調査で明らかとなった問題について、2023年調査にあたり操作性の向上のため、機能を追加実装した。
【方法】
 2018年調査(2020年実施)においては新型コロナ感染症による影響で、医療機関での採録の延期や中止のため、採録スケジュールの遅延が起きた。この影響を緩和するため、①「仮採録機能」、②「医師による判定サポート機能」の2つを実装した。
【結果】
 ①「仮採録機能」を実装し、事前に退院時サマリ等の提供を受け、予め項目を入力しておくことで、現地での採録では主に画像確認とデータ補填することで、これまで30分程度要していた採録時間が従来の2/3~1/2程度に短縮した他、個人属性情報の転記ミスが減少した。
 ②「医師による判定サポート機能」を実装し、モニカ分類に基づいた複数医師による差異ケースを抽出し、再判定を行うことで、判定基準を適正化につながった。結果的に再判定のケースを約1000件程度から1/5程度まで減少させることができた。
【考察・結論】
 本システムを用いて2018年調査では採録症例約9500件のうち、登録症例約5500症例であったが、データ消失や二重登録などのデータ精度に係る障害は起きていない。現在は2023年分採録と判定を継続している。
 仮採録については、退院時サマリは医療機関により記述内容にばらつきがあり、全ての症例に適用することはできず、効果は限定的である。判定については、採録データを解析することで、「仮判定」までを行い、最終判定を医師が行う機能の実装することでさらなる時間短縮は期待できる。
 当初から本システム開発とサポートに携わってこられたアイディービー・ジャパン合同会社の伊藤盟氏に深謝申し上げたい。
【倫理的配慮】
 本研究は福島県立医科大学倫理審査委員会の承認を受けた。