Japan Association for Medical Informatics

[4-J-5-05] 電子カルテシステムベンダ変更時のデータ移行計画

*Yuki Nagasaka1, Yuki Shimizu1, Tomohiro Oshita1 (1. 株式会社クニエ)

Electronic medical record system replacement, System vendor change, Data migration, Purpose and method of data migration, Procurement method and timing of data migration work

【目的】医療機関は自院のニーズに合った電子カルテ製品を選択できる一方で、ベンダ変更時の障壁となるのが診療データ移行である。電子保存の三原則を担保する必要があり、移行コストも障壁となる。これらの障壁を克服するため、データ移行の重要論点と手法を考察する。
【方法】電子カルテデータを「1.診療録の原本保存」と「2.電子カルテでの継続利用」の観点で移行目的を整理し、後者は「a.再利用可能な形式」、「b.統計分析可能な形式」、「c.閲覧のみ可能な形式」の3区分で移行方法を整理した。データ移行費用規模を①ベンダ変更の有無、②移行データの範囲、③原本性確保の手法、④データ抽出作業者の観点で整理し、データ移行範囲と費用について相対的に比較・評価した。
【結果】「1.診療録の原本保存」では、全データを移行する必要がある。「2.電子カルテでの継続利用」では、「a.再利用可能な形式」として検査結果、過去オーダ(処方のみ)、未来オーダ、患者情報・病名、マスタ、「b.統計分析可能な形式」として検査結果、「c.閲覧のみ可能な形式」として診療録・診療諸記録、文書・テンプレート、クリニカルパス、過去オーダ(処方以外)に区分できる。調達区分・調達タイミングを工夫し、抽出ベンダに新・旧電子カルテベンダではない「第三者ベンダ」を選択することで、結果的にデータ移行範囲と費用のバランスを最適化できた。
【考察・結論】ベンダの変更有無によって、取りうるデータ移行方法や、現実的に実現可能な範囲、またその費用が異なる。結果的に既存ベンダの更新となれば全データ移行も可能だが、最初からそれを必須要件とすると公平な検討と競争が阻害される。電子カルテ更新のコスト抑制は大きな課題であり、費用対効果の高い更新を実現するためには、移行範囲の整理のみならず、調達の区分やタイミングを整理することが重要である。
【倫理的配慮】本演題は医学系研究には該当しない。