日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PA(01-64)

ポスター発表 PA(01-64)

2016年10月8日(土) 10:00 〜 12:00 展示場 (1階展示場)

[PA41] 減数0の一桁ひき算における反応時間の特性

後藤聡 (北海学園大学)

キーワード:一桁ひき算, 減数0

目   的
 一桁ひき算(減数・答9以下の整数ひき算)の減数0の問題には,それ以外の問題と比較してどのような特性があるか,計算に要する時間(反応時間)を手掛かりに検討する。
方   法
対象:小学校2年生77名
方法:パソコンを用いて被減数が1~9,減数が0~9の一桁ひき算問題の回答を求めて反応時間を測定した。被減数0の問題は0-0のみで比較対象がなく,被減数10の問題は減数0の答が2桁になるため除外した。
結果と考察
 減数0の問題と0以外の問題を分けて,被減数別の反応時間の平均値(sec)を表,図に示した。
 減数0の問題とそれ以外の問題の反応時間を比較するため,それらの平均値を用いて平均値の差の検定を行ったところ1%水準で有意であった。そこで,さらに被減数1~9を分けて2(減数:減数0・減数0以外)×9(被減数:1~9)の分散分析を行ったところ,減数の主効果(F(1,76)=67.150,p<.01),被減数の主効果(F(8,608)=27.800,p<.01),減数と被減数の交互作用(F(8,608)=4.971,p<.01)が有意であった。
 減数と被減数の交互作用が有意であったので,減数についての単純主効果を分析した結果,減数0は有意でなかった。減数0以外は1%水準で有意であった。そこで多重比較を行ったところ,被減数1と7~9,2と6~9,3と6~9,4と6~9,5と7~9,6と7~9,7と9,8と9が1%,1と6が5%水準で有意であった。これらの結果,減数0の問題は,被減数の大きさに関わらず反応時間に差はないことが明らかになった。減数0以外の問題については,全体として被減数が大きくなると反応時間も大きくなる傾向が示された。
 被減数についての単純主効果を分析した結果,被減数3・5~9が1%水準で有意であった。
 以上より,減数0の問題の特性に関して以下のことが言えよう。
① 減数0の問題は,減数0以外の問題とは異なり,被減数の大きさに関係なく反応時間に差はない。減数0の答は被減数の数であるというまとまった知識の体制化が予想される。
② 被減数が小さい一部の問題を除き,減数0の問題の方が減数0以外の問題よりも反応時間計が小さい。計算過程が不要のためと思われる。