日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PA(65-84)

ポスター発表 PA(65-84)

2016年10月8日(土) 10:00 〜 12:00 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PA69] 新任教員に求められるコンピテンシー向上に向けてのカリキュラム作成の試み(1)

教員就職意欲を中心とした検討

阿部慶賀1, 高村和代2, 福田茂隆#3, 中島葉子#4, 高田準一郎#5, 佐藤善人#6 (1.岐阜聖徳学園大学, 2.岐阜聖徳学園大学, 3.岐阜聖徳学園大学, 4.岐阜聖徳学園大学, 5.岐阜聖徳学園大学, 6.東京学芸大学)

キーワード:教員就職意欲, 社会的自己制御

目   的
 大学における教員養成課程においては,座学での基礎知識と専門性の精緻化に加え,現場での実習による学びの両立が求められる。また,新任小中学校教諭でいきなり学級担任にあたる者も少なくない。そこで,著者らは現場での実習の準備段階として,県教育委員会の指導主事を講師として招き,現場で求められる技能・素養に関わる全9回のオムニバス形式の講座(以下,県教委講座)を設けた。本研究ではこの事前の県教委講座の影響について,特に教員就職意欲をはじめとした態度の変化に着眼し検討を行った。
県教委講座の概要
 県教委講座ではTable 1に示す9テーマの講座を各回90分程度実施した。各テーマは県教委と大学間での事前の議論の結果新任教員に求められるコンピテンシーとして挙げられたのであった。開講時期は6月から7月とし,正規の授業とは別に任意で参加する講座として設置した。
方   法
 岐阜県G大学教育学部に所属する大学生235を対象とした縦断的調査を行った。調査は第1回を2年次3月(有効回答数179名),第2回を3年次9月(有効回答数178名),第3回を3月末(有効回答数169名)に実施した。なお,教育実習は9月から11月にかけて実施しており,調査協力者は第1回調査から第2回調査の間に県教委講座を受講し,第2回調査から第3回調査の間に教育実習を経験した。
 調査での質問項目としては,先行研究(高村ら,2012)でも用いられた社会的自己制御(以下,SSRと表記。原田ら,2008),大学適応感,教員就職意欲(吉澤・西川,2008)を指標として用いた。
結   果
 各調査時について県教委講座の参加回数と大学適応感,SSR,教員就職意欲との相関を検討したところ(Table 2参照),3年次3月に教員就職意欲と自己抑制,持続的対処,感情・欲求の項目に有意な相関が見られた。2年次3月の段階では学級帰属感・持続的対処を除いて出席回数と相関が小さいことから,もともと意欲や社会的自己制御能力の高い者が多数受講していたのではないと考えられる。学級帰属感と出席回数が毎回比較的高かった点については,任意での参加であったため友人同士で共同して参加した学生が多いことや,同じ進路を目指す者としての目的意識の共有が影響したと考えられる。
 また,県教委講座受講直後の3年次9月ではなく,教育実習を終えた3年次3月において相関がみられたことから,現場での体験を通じて,県教委講座での学習と教員就職意欲,社会的自己制御能力が結びついたことが示唆される。