一般社団法人 日本医療情報学会

[3-E-2-03] 看護業務にICTを活用するための課題と期待

信藤 涼子1 (1. 株式会社オカムラ)

臨床現場での多職種への情報伝達は、患者の診療記録で行われることが多い。看護師は24時間交代しながら患者のそばにいるため、看護師が発信する情報の影響力は大きく、誰でも同じ理解ができる正確性も求められている。電子カルテシステムをはじめとした医療情報システムの導入も進んでおり、電子カルテでの記録は、マスタの整備、記録様式の統一、テンプレートの活用等で、正確かつ迅速な情報伝達が容易になったはずである。しかし、看護記録は、診療報酬上必要な書類が増えたことや訴訟対策等で記録することが増え、自己流記録も根強く残り、業務負担になっている。
看護師の誰もが経験する検温は、声かけから入力までいくつかのプロセスがあるが「36.5℃」のみ記録される。バーコードリーダーでの患者認証、生体デバイスでの転送、最近は音声入力や様々なICTメディアやシステムがあると聞く。しかし、現在もメモに状態を転記して持ち歩き、測定値をメモし、まとめて入力する看護師も多く、転記ミスや情報伝達の遅れによる対応遅れのリスクがある。便利なシステムやツールが活用できれば、患者の安全は担保され、看護師の業務も効率的になる。しかし、現在使用しているのは患者認証のバーコードリーダーのみが多く、せっかく導入された生体デバイスも使用率が低いと聞く。そこには、多くの人的、物的、文化等様々な現場の問題があり、仕事の仕方を変えられずにいる。安心・安全な看護の提供のためにも、既存のシステムから「なぜ変われないのか」の現場の声と、今後のシステム側との連携や導入可能な方策を考えたい。