日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PA(01-64)

ポスター発表 PA(01-64)

2016年10月8日(土) 10:00 〜 12:00 展示場 (1階展示場)

[PA54] 大学2年次生の教職志望意識と関連体験

1年次の志望意識からの変化も視野に

若松養亮 (滋賀大学)

キーワード:大学生, 教職, 進路意思決定

問題と目的
 教育学部生の教職志望意識は,入学後から一度低下し,また高まる(松本・生駒,1984)など一様ではない。3年次の教育実習までの学生は,実体験が多く持てないなか,教職志望意識を維持する,あるいは建設的に再吟味することが求められる。しかしこの期間を扱った研究は少ないことから,本研究において志望意識の強弱や変化に対して体験がどのように関連するかを明らかにする。
方   法
(1) 調査の概要
 国立教員養成学部の2014年度入学生に対して授業終了後に質問紙調査を行った。調査時期は2014年11~12月(1年次)と2015年11月(2年次)である。専攻・入試・性別・誕生月日を用いてマッチングできた183名を対象に分析した。
(2) 質問紙の内容
 教職志望意識は後述する4選択肢を提示し,1年次も2年次も調査時点の状態を回答させた。
 体験尺度は若松・古川(2013)の調査項目を簡易化し,社会的比較や間接的経験を,ポジティブ・ネガティブ両面に渡るように12項目にまとめ,2年次の調査において,「教職に関して次のように日頃思うことがどのくらいありますか」と教示した。評定は「5.よくそう思う」から「1.そう思わない」までの5件法を用いた。
結果と考察
(1) 体験尺度の因子分析と分布概要
 12項目を最尤法で因子分析を行い,プロマックス回転を施すと,剰余3項目を除き9項目が2因子にまとまった。因子相関は0に近い。それぞれ「ポジティブ体験」,「ネガティブ体験」と命名した。評定平均から2年次生の多くが体験したと回答しているが,SDから個人差も大きいと言える。
 2年次の教職志望4段階でこれら2因子の因子得点を比較すると,ポジティブ体験得点で主効果が有意(F(3,191)=85.0 p<.001)であった。評定平均で見ると(下図),志望が強いほどポジティブ体験が多いが,ネガティブ体験は中程度で差が見られず,2年次の志望に影響がないと言える。
 続いて1年次の志望意識4段階とのクロス表から,両時点で最高段階の人も含めた「上昇群」(91名),両時点で最低段階の人も含めた「下降群」(52名),それ以外の「不変群」(23名)で2因子の得点を比較すると,同じくポジティブ体験得点のみが有意(F(2,163)=42.6 p<.001)であった。評定平均でみると(下図),上昇群が他の2群よりポジティブ体験得点が高かった。ネガティブ体験得点はやはり中程度で差がなかったことから,影響がないと考えられる。
 ネガティブ体験が志望意識と関連しないのは,ポジティブ体験の影響が考えられる。しかしなぜ影響が異なるのか,また影響の個人差は,何らかの調整変数になっているのか,ネガティブの程度の強さが異なるためかなどを今後検討したい。