日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

2016年10月8日(土) 13:00 〜 15:00 展示場 (1階展示場)

[PB02] 児童期後期における養育態度と親子間葛藤(2)

心理的ストレス反応との関連

渡邉賢二1, 平石賢二2 (1.皇学館大学, 2.名古屋大学)

キーワード:親子間葛藤, 養育態度, 心理的ストレス反応

目   的
 児童期から青年期の親子関係は変化すると言われている(Steinberg, 2001)。青年期は家族の監督から離れ1人の独立した人間になろうと心理的に離乳していき,親子間葛藤が生じやすくなることが指摘されている(西平,1990など)。
 親子間葛藤に関する研究は,これまで米国では数多く実施されてきている。Dekovic(1999)は,親子間葛藤と子どもの抑うつとの間,養育態度と親子間葛藤との間には関連があることを報告している。Steeger & Gondoli(2013)は,養育態度の心理的統制と親子間葛藤と子どもの攻撃行動や抑うつとの間には相互の関連性があることを報告している。しかし,我が国では,親子間葛藤について議論はされているが,実証的な研究はほとんどされていない。
 本研究では,青年期にはいる前の小学6年生とその母親に焦点をあてて,養育態度が母子間葛藤を媒介して,心理的ストレス反応を予測するというモデルについて検討する。先行研究より,子どもの性別(McGue et al., 2005),母親と子ども(Kimberly et al., 2005)により母子間葛藤の認知は相違がみられたことが明らかにされているため,性別,母子別で検討する。
方   法
調査対象者:小学校14校の小学6年生(男357人,女379人,不明2人)とその母親738組を対象とした。
調査時期:2014年12月
手続き:担任教諭から調査用紙を児童に配布し,児童と母親が自宅で実施して,終了後担任教諭に提出した。
調査内容:子どもと母親:①養育スキル尺度(渡邉・平石,2014);理解尊重スキル10項目,道徳性スキル6項目(6段階評価,1点~6点),②養育尺度心理的統制(内海,2013);6項目(7段階評価,1点~7点),③親子間葛藤尺度(CBQ parallel version)(Sturge-Apple et al., 2003);22項目(4段階評価,1点~4点)の日本語翻訳版を実施した。この尺度は親用と子ども用に分かれているが同一概念を測定する平行尺度である。本研究では開発者の許可を得て翻訳版を作成した。④心理的ストレス反応尺度(鈴木ら,1997);抑うつ・不安6項目,不機嫌・怒り6項目,無気力6項目(4段階評価,0点~3点)
結果と考察
 養育態度である養育スキル(理解尊重スキル,道徳性スキル)と心理的統制が母子間葛藤を媒介して,心理的ストレス反応を予測するか検討するために,子どもの性別,母子別に共分散構造分析を実施した(Fig 1,Fig 2)。モデルの適合度は(子ども;母親),GFI=.985; .982,AGFI=.931; .918,CFI=.991; .987,RMSEA=.051; .059であり,子どもと母親双方とも,十分な数値を示していると判断した。子どもと母親,男女双方とも,理解尊重スキルが母子間葛藤を抑制し,心理的統制が母子間葛藤に影響を及ぼし,母子間葛藤が抑うつ・不安,不機嫌・怒り,無気力に影響を及ぼしていた。子どものすることに対して,なんでも母親の考えたようにさせるというような子どもの行動を統制しようとする母親の養育態度は,母子間の葛藤を引き起こし,その葛藤が抑うつや不安な気持ち,不機嫌や怒りの感情,無気力な気持ちを引き起こすと推察される。良好な養育態度の重要性が示唆された。今後は縦断的に調査を行い,母子間葛藤の変化,その変化の規定要因や影響要因を検討していく。

 本研究は平成25〜27年度日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究C:研究代表者 渡邉賢二,研究課題番号25380899)の助成を受けて行われた。