日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

2016年10月8日(土) 13:00 〜 15:00 展示場 (1階展示場)

[PB06] 動機づけを向上させる身体表現活動の開発Ⅰ

体力・表現力に着目した身体表現の教育プログラム開発

高木亮 (就実大学)

キーワード:カラースカーフ, 身体表現, ムーブメント教育

問題と目的
 現行『幼稚園教育要領』では「ねらい及び内容」として幼児教育の5領域の集大成の「遊びを通した指導」と「環境を通した教育」が示されている。遊びにはこのように様々な発見をし,思考をめぐらしながら,想像力を育み,心身を使いながら体験の中で人間関係を育む機能が含まれている。一方でこのような総合的で理念的な「ねらい及び内容」についてはエビデンスベースの議論がなかなかなされてこなかった。本研究はこのような状況を踏まえ,今後の保育課程の方法論を科学的に分析し評価しながら,次期『幼稚園教育要領』改訂の課題の一つになるともいわれているカリキュラムマネジメントの在り方を議論することまでを目的とした実験研究の導入を目指す。そのような目的の中で体育学・健康心理学的介入方法を参考にプログラムを作成し,実践・実験的対応を行う。
 介入方法として健康・体育・療育の視点からみる発達支援で注目されているムーブメント教育の手法を参考とすることとした。ムーブメント教育(「ムーブメント療法」とも呼ばれる)とは「健康と幸福感の達成」を「身体的・認知機能の動きの習得」と「身体的・認知機能の動きを通して他の能力開発」を行うことの2面を目標としている(金川,2011)。このため,認知・知的・身体技能の未発達な幼児やハンディキャップへの特別支援教育や老人福祉のプログラムの根拠として近年着目されていることが『Cinii』などの検索で理解できる。
 ところで,幼児にとって色は身近なものであり幼児を取り巻く環境認識は色による認識も多い。幼児の自然認識は3歳から4歳にかけて増加し,この時期にたくさんの色の認識(原体験)を増やすことが重要であるとされる(中西ら,2002)。保育・発達支援の現場において行われているムーブメント教育において保育者の爽快感が向上し,疲労感,抗うつ感,不安感が減少している(阿部 2010)。このような爽快感や楽しさによる動機付け向上は幼児にも期待されるが今のところ適用先行研究は見当たらない。ムーブメント教育の教具の一つとしてスカーフがあげられ身体表現において体力と表現力の向上が期待される。
 このような先行研究の背景を踏まえ,本研究は幼稚園年少から年長の学齢期において重要と考えられる“運動強度”と“運動に関する動機づけ”,“情緒・気分の安定度”の三点を目的変数とする。ムーブメント教育に基づいた幼児教育的介入プログラムを試行し,その成果を評価,保育課程経営に立った改善の議論を行う。倫理・安全面を万全とするため今年度は大学生対象にFigure 1.の実験を実施中で来年度に子ども園向けプログラムに修正を行い総括する。なお,本研究は就実大学4年生日下公貴の調査研究であるが,学会の非明文化規定により提出1月後に学部生の非会員登壇が拒否されたため高木が発表するものである。
研究方法
 カラースカーフを持った上での30秒の運動を行う実験群と持たない同様の動きを行う統制群において心拍数と主観的運動強度尺度,気分調査票の3種1セットの測定を前後に行う。先行研究の成果等ではスカーフの綺麗な動きを形成する感覚により,気分調査票の特定下位尺度が高まり,主観的運動強度尺度と心拍数が適正な強度に高まるものと期待できる。5月現在,2名ずつの実験群と統制群の被験者を確保し,測定と今後の留意点を整理している状況である。7月までに各25名を目標に被験者確保をはかる。
引用文献
阿部美穂子(2010).「ムーブメント活動による保育士の気分変化に関する研究」『教育実践研究』5,pp.105-111.
金川朋子(2011).「ムーブメント教育・両方を用いた動きづくり」『大阪教育大学紀要Ⅳ部門』59(2),pp.115-122.
中西いつ子ら(2002).「色から見る幼児の自然認知『教育実践総合センター研究紀要』11,pp.161-167.