The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PB08] 児童期における「重要な他者」意識の発達(2)

小学校中学年から高学年への発達的変化

寺川志奈子1, 藤村宣之2 (1.鳥取大学, 2.東京大学)

Keywords:児童期, 他者意識, 発達的変化

目   的
 子どもは発達に伴って,親から仲間,そしてさらなる広がりをもつ複数の「重要な他者」と親しい人間関係を構築しながら,それを基盤に社会参加を果たしていくことが予測される。特に児童期は,親子関係から仲間関係への移行期と考えられる。寺川・藤村(2016)は,その発達的な普遍性と環境要因による影響をみることを目的として,フィンランドと日本を比較検討し,子どもの社会的ネットワーク形成過程の多様性を示した。本稿では,仲間関係を基盤として親から自立を始めるとされる小学校3年生と5年生を対象に,日本の都市部の児童における,「重要な他者」意識の発達過程について,詳細に検討する。
方   法
(1) 対象:都市部の小学校に在籍する3年生90名,5年生52名。
(2) 課題:小・中学生の日常生活場面で生起しそうな状況について,中学1年生へのインタビューに基づき,13場面を設定し,そうした状況を最も共有したい他者(共有したい人,相談したい人,話したい人等)は誰かについて,11対象から,ひとつを選択させた。
 13場面の構成は,以下の通りであった。
 ①誰かと楽しさを共有したい状況6場面:(楽しい遊び,おしゃべり,買い物,趣味,放課後,休日)
 ②誰かに困ったことを相談したい状況4場面(勉強,友人関係,家族,将来)
 ③他人に言いにくいことを話す状況3場面(からだ,秘密,異性)
(3) 手続き:質問紙調査法(クラス単位で実施)。
結果と考察
 状況を最も共有したい他者として,各対象が選択された平均場面数(13場面中)をTable 1に示す。学年差としては,3年から5年にかけて,「友達」の選択が有意に増加した(t=2.11,p<.05)。一方,「母親」(t=3.32,p<.01),「家族(含母親)」(t=3.08,p<.01)の選択は,有意に減少した。
 また,子どもの「重要な他者」の選択タイプの分布を学年ごとにTable 2に示す。タイプ分けの基準は,13場面の過半数である7場面以上で選択された対象であり,かつ,2位の選択対象との差が3場面以上ある最も優位な対象を選択タイプとした。各タイプについて,学年差をみると,「母親型」は3年生で有意に多くみられ(直接確率計算p<.01),一方,「友達型」は5年生で多い傾向がみられた(p<.10)。
 これより,3年生から5年生にかけての発達的変化として,「家族」,とりわけ「母親」を重要な他者として捉えていたのが減少し,「友達」をはじめとする家族以外の他者へと人間関係を拡大していく過程を捉えることができた。同時に,「広がり型」のなかには,「ひとりがいい」「誰でもいい」とする選択の多様性も認められた。