The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Presentation information

ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PB10] 大学生のワークライフバランスと大学生活への適応

学業・バイト・サークルの活動バランスからの検討

佐藤有耕, 水島由里香# (筑波大学)

Keywords:大学生, 適応, ワークライフバランス

目   的
 大学生は大学生活において,どのように生活を組み立て,どのような生活時間のバランスで大学生活を過ごしているのであろうか。本研究では,学業,アルバイト活動,部活・サークル活動を大学生の生活の主要な柱として考え,これらにどの程度の時間を使って,自分の活動的な時間を配分しているかを大学生のワークライフバランス(WLB)と呼ぶことにし,1.大学生はどのようなWLBで大学生活を過ごしているのか,2.大学生は自分たちのWLBに満足しているのか,3.大学生のWLBが大学生活への適応とどのように関連しているのかを明らかにすることを目的とした。
方   法
調査対象者と時期 国立大学1校の1-4年生145名(M64,F79,性別未記入2,平均年齢20.1歳(SD=1.66))。2015年10-11月に実施。
調査内容 1.大学生活で取り組んでいる活動とバランスについて,Q1:現在のアルバイト活動の有無,Q2:現在の部活動・サークル活動の有無,Q3:現在の大学生活のワークライフバランス(WLB):大野(2011)を参考にして,「学業」「アルバイト」「部活動・サークル」のそれぞれの活動に対して,現在どの程度の時間を使っているかを○:△:□=10という整数の比の形で記入を求めた。Q4:WLB満足度,Q5:理想の大学生活のWLB,Q6:現在の活動的時間と休息時間のバランス,Q7:活動-休息満足度,Q8:理想の活動的時間と休息時間のバランス,Q9:重視する活動,Q10:学期中の活動時間数。2.大学生活での時間の使い方について,3.大学での学習状況について。その他,ワークライフバランスに関連した質問項目と適応に関連する質問項目,調査対象者の属性を問う項目を含めた。質問紙は個別に封筒に入れて配布し,封をした上での提出を求めた。
結果と考察
1.大学生のWLB 使っている時間の比率は,学業:アルバイト:部活動・サークル=5:2:3であった。学業に半分,そしてアルバイトとサークルでは,サークルの方が若干比率が高く,最後にアルバイトであった。
2.大学生のWLBへの満足度 1.で示した大学生の現在のWLBは,学業:アルバイト:部活動・サークル=5:2:3であったが,理想の比率も同様に5:2:3であった。WLB満足度得点(1項目,5件法)も1-3年では男女ともに3.0を超えており,多くの大学生は,自分たちのWLBにおおむね満足していることが示された。
3.大学生のWLBと大学生活への適応 パス解析の結果,以下のことが示された。1)大学生のWLB満足度を高めるには,学業のために十分な時間を充てること,睡眠時間を確保すること,活動的時間と休息的時間のバランスに無理が生じないようにすることが有用であることが示された。2)大学生のWLB満足度が高い場合には,勉強量が人より多いと感じられ,充実感が高まり,抑うつ感は減ることが示された。3)大学生のWLBにおいて,学業に対してアルバイトを優先している度合いが大きい場合には,単位取得に人より苦労していると思え,充実感が下がり,学業意欲が低下し,疲労感が増えることが示された。
 本研究の結果から,大学生のWLBにおいては,学業に対してアルバイトの占める割合が大きい場合に,より不適応的な状態に陥りやすいことが示された。アルバイトによる疲労のみならず,学外での活動時間が増大し学業に向ける時間が減ることで,学業を本分とするはずの大学生らしくない自分に疑問が生じ,アイデンティティが揺らぎ,自分を見失い混乱するおそれがあると考えられる。
*本研究は第二著者水島由里香の卒業研究であるが,非会員のため本発表では第一著者を交代した。
*本研究の遂行にあたり,森本明日香氏(筑波大学卒)の協力を得た。記して感謝する。