The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PB11] 乳幼児期の情動制御に関する2つの気質と社会的発達における個人差との関連

反応的な制御とエフォートフルな制御

水野里恵 (中京大学)

Keywords:行動的抑制傾向, エフォートフル・コントロール, 社会的発達

問   題
 就学前期になると子どもは,自己の欲求や意思と他者のそれらとが葛藤する場合,内面化した行動規準に照らして自分の行動を制御するようになる。ブランコに乗りたいと思っても他の子どもがそれで遊んでいる場合,「順番で遊ぶ」という行動規準が内面化されていれば,自分の番が来るまで待つことができるようになるし,順番を抜かすような子どもがいれば抗議することもできるようになる。さて,子ども集団での個々の子どものそうした行動を見ていると「自己」を前面に押し出しがちな子どもから抑制しがちな子どもまで幅広い個人差が見られる。ここで見られる個人差は気質的個人差なのであろうか,それとも,パーソナリティにおける個人差なのであろうか。
 物怖じしがちな子どもは自ずと抑制行動をとるであろうし,我慢できる子どもは必要な場合には抑制行動をとるが,必要な場合には抗議するだろう。そういった意味で,行動的抑制傾向は刺激に対して反応的に,エフォートフル・コントロールは生起しそうな自らの行動を自発的に制御する方向で働くといった意味で,行動制御にかかる2つの気質次元である(Eisenberg & Spinrad, 2004; Rothbart & Bates, 2006)。
 本研究では,子どもの社会的発達の指標として対人場面での「自己」の制御行動をとり,それが発達初期からの2つの気質(行動的抑制傾向とエフォートフル・コントロール)とどのように関連しているのか調査した。
方   法
 A市内5区の住民基本台帳から無作為抽出した2010年出生の第一子を対象に(コホート3),2011年から2015年までに計5回の質問紙調査を実施した。本稿においては,5回のすべてのデータが揃った63名(男児27名,女児36名)を分析対象とした。各調査時点における子どもの平均月齢は,第1回:11.6ヶ月齢(SD=3.57),第2回:21.3ヶ月齢(SD=3.54),第3回質:40.5ヶ月齢(SD=3.61),第4回:51.7ヶ月齢(SD=4.01),第5回:64.7ヶ月齢(SD=3.64)であった。各調査時点で子どもの行動的抑制傾向とエフォートフル・コントロールの気質測定を行った。本研究では第5回調査で測定した自己制御行動との関連について報告する。なお,第5回の対人場面での自己制御行動の測定項目は,2010年度出生の第一子512名を対象に実施したウェブ調査と同じ項目である。
結   果
 ウェブ調査のデータに実施した自己制御行動測定項目に対する尺度分析の結果を踏まえて,⒜同年齢の子ども,⒝きょうだいに対する「自己主張的自己制御行動・「自己抑制的自己制御行動」の尺度得点を算出した。その尺度得点と4時点での行動的抑制傾向尺度得点(BI),エフォートフル・コントロール尺度得点(EC)との相関を求めた(Table 1)。
考   察
 2つの気質は「自己」の制御行動に関して,同年齢の子ども・きょうだいに対して異なった関与の方向を示した。きょうだいに対して主張面・抑制面双方で「自己」の制御ができる子どもはエフォートフル・コントロールが高い子どもであり,同年齢の子どもに対して自己主張ができる子どもは行動的非抑制傾向にある子どもであると考察された。
 本研究は科学研究費補助金(基盤研究(C):課題番号26380909)による助成を受けた。