The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Presentation information

ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PB12] 幼児における数表記の理解と産出の発達(9)

数字の読み書きと指の数・加算・打数かぞえの関連

古池若葉1, 山形恭子2 (1.京都女子大学, 2.京都ノートルダム女子大学)

Keywords:数表記, 数概念, 幼児

目   的
 古池・山形(2015ab)は,3~5歳児を対象に,数字の読み書きと数概念課題(「4つの積木」「13の丸」:1対1対応の原理の指標,「数選び」:基数性の指標)との関連について検討してきた。その結果,数概念課題が数読字数と数書字数に影響していた。さらに,Koike & Yamagata(2016)は,数概念課題として「指の数」「5以下の加算」「打数かぞえ」と数字の読み書きの間の偏相関(月齢を制御変数とする)を検討した。その結果,「指の数」「打数かぞえ」については数読字数・数書字数との間に有意または有意傾向の相関が見られた。本稿では,数字の読み書きと一連の数概念課題との関連を包括的に説明するモデルを構築するための予備的分析として,一連の数概念課題が数読字数と数書字数のそれぞれにどのような影響を与えているのかを対象児の年齢も考慮して検討する。
方   法
 すべて個人面接調査。 調査参加児:3歳児13名(平均3:10),4歳児20名(平均4:10),5歳児20名(平均5:9)。 課題:<数表記課題>(1)数字の読み課題:数字の書かれたカードを1枚ずつランダムに提示し,書かれた数字を声に出して読んでもらった(0~13,20の計15個)。(2)数字の産出課題:調査者が読み上げる数字を,A3大の画用紙にカラーペンで書いてもらった(1~11,0の計12個)。<数概念課題>新版K式発達検査2001より,(3)4つの積木,(4)13の丸,(5)数選び,(6)指の数,(7)5以下の加算,(8)打数かぞえの課題を実施した。
結   果
 「数字の読み」と「数字の産出」については,それぞれ正しく読まれた(書かれた)数字を得点化し総得点を算出した(満点は「数読字数」15点,「数書字数」12点)。「13の丸」は10までと13までの計数に分けて得点化した(「丸10」「丸13」,各1点満点)。「数選び」も4までと4より大きい数に分けて得点化した(「数選び(3,4)」「数選び(6,8)」,各2点満点)。「指の数」は左右それぞれの手の指の数を問う課題(「指の数5」,2点満点),両手の指の数を問う課題(「指の数10」,1点満点)に分けて得点化した。「5以下の加算」「打数かぞえ」の満点はそれぞれ3点である。
(1)数読字数と数概念課題との因果関係の分析
 「数読字数」を従属変数とし,「積木4」「丸10」「丸13」「数選び(3,4)」「数選び(6,8)」「指の数5」「指の数10」「5以下の加算」「打数数え」および「月齢」を説明変数とする,ステップワイズ法による重回帰分析を年齢群ごとに行った(Table 1)。なお,3歳児は全ての課題を実施できた参加児が13名中4名のみだったため,本稿では結果を省略する(以下同様)。また,5歳児については,積木4,丸10,丸13,数選び(3,4)が全員満点であったため,これらの変数は分析から除外された(以下同様)。数読字数に有意な影響を与えていたのは,4歳児で「数選び(3,4)」「積木4」,5歳児で「指の数5」「月齢」であった。
(2)数書字数と数概念課題との因果関係の分析
 「数書字数」を従属変数とし,上記(1)と同一の数概念課題と「数読字数」「月齢」を説明変数とする,ステップワイズ法による重回帰分析を年齢群ごとに行った(Table 2)。数書字数に有意な影響を与えていたのは,4歳児で「数読字数」「打数かぞえ」,5歳児で「月齢」「数読字数」であった。
考   察
 本稿では,数概念課題のうち,1対1対応の原理と基数性の指標課題(「積木4」「数選び(3,4)」)に加えて「指の数5」が5歳児の数読字数に,また,「打数かぞえ」が4歳児の数書字数に有意に影響していた。これらは基数性の指標とも解釈できるが,他の基数性指標課題との有意な相関はほとんど認められない(Koike & Yamagata, 2016)。今後は,各課題の性質や課題遂行が可能になる時期と順序性も考慮しながら,数字の読み書きとの関連を包括的に説明するモデルを検討することが課題である。

(本研究はJSPS科研費基盤研究Cの助成を受けた)