The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Presentation information

ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PB18] 高校生のキャリア発達について

発達を促すために教師としてできることを考える

本城慎二 (東京都立府中高等学校)

Keywords:キャリア発達, キャリア教育, 希望

問題と目的
 内閣府の「平成26年版子ども・若者白書」によれば,「自分の将来について明るい希望を持っていますか。」との問いに対して「希望がある。」,「どちらかと言えば希望がある。」と回答した者の率は61.6%,また「40歳位になった時どのようになっていると思いますか。」との問いに「幸せになっていると思う。」,「どちらかと言えばそう思う。」と答えた者の割合が66.2%と,いずれも諸外国(アメリカ91.1%・86.8%イギリス89.8%/・86.1%,フランス83.3%・/87.4%,ドイツ82.4%・86.2%,韓国86.4%/・81.6%,スウェーデン90.8%・82.1%)の結果と比較してかなり低い数値となっている。
 一方,学校現場においては,子どもたちが将来に向けての意識を高め,社会的・職業的に自立できるようになることを目指し,キャリア教育の名のもと様々な活動が行われている。その中では大人たちから子どもたちに,『将来の目標を見つけ希望を持つことの重要性』が語られることが多い。
 ところで,キャリア教育の目的は児童生徒一人一人のキャリア発達を促すことだと言える。このキャリア発達は「自己の知的,身体的,情緒的,社会的な特徴を一人一人の生き方として統合していく過程」であり生涯をかけて自分が持つ様々な要素を統合していくプロセスとされる。そして,そのプロセスは自動的に年齢と共に進行するものでもなく万人に等しく同じ形で現れるものでもない。それは個々人の主体的な選択と意思決定によってその様相を変化させていくものであり人は自身のキャリア発達のプロデューサーとも言えるのである。
 以上のことを踏まえると,子どもたちのキャリア発達を促していくためには,その前提として,まずは彼らが自己の将来に希望を持てるようになることが不可欠なのではないだろうか。それ抜きにして子どもたちが主体的かつ積極的に自己の進路の選択や意思決定に取り組みキャリア発達のプロセスを歩んでゆこうとすることは期待できず,キャリア教育の目的を達成していくこともできないと思われるのである。
 そこで,本研究では,子どもたちがまず自らの将来に希望を持ち自らの進路を前向きに検討できるようになるために,学校における日常的な教育活動の中で教師は具体的にどのようなことを実践していけばよいのかを考えることとする。言い換えれば,いわゆる「キャリア教育」における諸活動を子どもたちが意味のあるものとして受け入れるられる土台をつくるために何ができるかを考えることを目的とするものである。
方   法
(1) 調査の対象と時期
 2015年5月,東京都内の普通科昼夜間3部制の定時制高校1学年の生徒57名を対象に,以下(2)により調査を実施した。対象となる生徒たちは,中学校までの様々な経験の結果として定時制高校に進学してきている。
(2) 調査内容
 「子ども・若者白書」の質問項目「自分の将来について明るい希望を持っていますか。」(希望)に加えて「高校卒業後の進路や自分の人生について真剣に考えている。」(進路)の2項目を将来に対する姿勢として位置づけ,学校教育の中核ある学習場面における彼らの経験が,その2項目とどの程度関連性を持つのかを確認するために,「これまで学校の勉強について自信を持てたことがありましたか。」(自信),「学校の先生に勉強面でほめられた経験がありますか。」(称賛),「高校での勉強は頑張れば良い結果を出せると思いますか。」(勉強)の3項目の質問を加えた質問紙調査を4件法で実施した。
結果と考察
(1) 結果
 得られたデータから各項目間の相関を求めた結果を以下に示す。
(2) 考察
 ①希望と進路の間には相関が見られた。将来にに希望を持てることと進路のことを積極的に考えられることが影響し合っていることが考えられる。
 ②称賛,勉強と希望の間にも同程度の相関が見られ,教師が子どもたちに,勉強すれば結果が出ることを実感させるような指導に努め,とにかく良いところを見出して子どもたちをほめるよう心掛けることが将来に希望を持てることと何らかの関連があることが考えられる。
 ③称賛,勉強と進路の間にも弱い相関が見られることからも日常的な学習場面での教師の関わりが重要であることを示唆している結果と言えよう。