日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

2016年10月8日(土) 13:00 〜 15:00 展示場 (1階展示場)

[PB22] 「関連づけ方略」による教授-学習活動

算数の授業における位相別の比較

藤田敦 (大分大学)

キーワード:教授法, 知識同化, 関連づけ

問題と目的
 語の意味を新たに「わかる」という体験は,「わからない」語を,既に「わかっている」語に置き換えることで生じる。つまり,「わかる」作業とは,未知の事項を既知の事項に関連づけるという認知的操作であると考えられる。これは知識獲得のプロセスにおける知識同化であり,記憶の側面から言えば,短期記憶内にある新たな情報を長期記憶に体制化していくプロセスであるとも言えよう。この知識同化や体制化が生じる学習手続きが,既有知識と関連づけて新しい内容を学習する有意味受容学習である。ここで学習に先立って提示される先行オーガナイザーは,新たな学習内容が関連づける知識の受け皿となる。つまり,理解や記憶は,新たに学習しようとする内容を,既に学習している知識と関連づけることで成立すると説明できるだろう。
 授業においては,学習者に新たな学習内容と,既に学習している知識や技能,他教科や単元・日常の生活体験等との関係を確認・発見させながら教えることで知識の関連づけは強化される。藤田(2015)は,既知と未知の知識を関連づける教授法や学習法を「関連づけ方略」と名付け,実際の授業の中では,どのような教授―学習活動として実現されているのかを調べた。小学校の授業指導案を分析し,「関連づけ方略」に相当する教授活動や学習活動を列挙した(Table 1)。
 これらの学習活動の頻度は,授業の位相や教科,単元,学習者の学年等によって,多様に異なっていると予想される。いかなる条件においてどのような方略が実践されているのか,その関係が明らかになれば,わかる授業をデザインしていく際の大きな手がかりとなっていくだろう。そこで本研究では,算数の授業に焦点化し,授業の位相と関連づけ方略との関係を整理することを目的とする。
方   法
 各地方自治体の教育委員会や教育センターが公開している算数の授業の学習指導案をWeb上から収集した(全652件)。その中から100件をランダムサンプリングし,本研究の分析対象とした。各指導案の中から本時案として記述されている1コマ分の授業計画を抜き出し,具体的な教授活動,学習活動を抽出し,授業の位相別に集計した。
結果と考察
 授業の位相を,①導入:開始から主発問(主課題)の提示まで,②展開:主発問に対する課題の解決活動,③発展:主発問以外(深化発問等)の学習,④終末:まとめや次時へのつなぎ,の4つに分け,位相別に主となる学習活動の頻度を集計した(Table 2)。
 導入ではⅠ,展開ではⅡ,Ⅲ,発展ではⅣ,終末ではⅠの各方略が多い点,全体としてⅢの方略が多いことが特徴的な傾向として挙げられる。授業では,導入時には,本時の課題を明確にするために情報の整理を行ない,展開時のように,問題解決が主活動となる場面では,解決の糸口を既学習事項の中に求めるといった活動を通して多様な知識の関連づけが実践されている。