The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PB38] 保育実習生の熟達化過程測定の予備的検討(3)

実習段階による保育環境知識の比較

大神優子 (和洋女子大学)

Keywords:保育実習生, 語い流ちょう性課題

問   題
 保育者養成課程では,学生は複数回の実習を段階的に経験していく。本研究の目的は,各学習段階で保育環境知識をはかる簡便な指標を作成するための基礎資料を得ることである。これまで,保育環境に関する語彙流ちょう性課題を用いて,保育者養成課程と非養成課程1),養成課程の実習前後2)を比較してきた。指標としての一定の有効性が示されたものの,実習の種類(見学/責任)による差が検討不十分であった。本稿では,大神(2016)で見学実習の前後を測定した対象者について,約1年後の責任実習段階まで追跡し,実習未経験・見学実習後・責任実習後の3時点を比較した。
方   法
対象及び時期:4年制女子大学の保育者養成課程学生42人。全員が幼稚園教諭・保育士に関わる実習を4年間で計5回(各2週間)経験する。調査時期は,(1)実習未経験(2年次:最初の幼稚園実習の約2か月前),(2)見学実習後(2年次:幼稚園実習の約1週間後),(3)責任実習後(3年次:2回目の保育所実習の約1週間後)の3時点で行った。なお,対象者は,(2)と(3)の間にも施設と保育所で計4週間の見学実習を行っている。調査協力への同意が得られ,全ての実習及び調査に参加した学生のみを対象とした。
課題及び手続き:実験者の教示に従い各自が回答用紙に記入する形式で,集団で実施した。練習課題の後,「~をできるだけたくさんあげてください」との教示で,以下の4種類の語彙流ちょう性課題を連続で実施した(各1分間, abは統制課題):a動物,b「か」で始まるもの,c幼稚園・保育所の保育室内にあるもの,d同園庭にあるもの。4課題終了後,自由記述でcdの保育環境課題の回答方略及び全体の感想を尋ねた。
結果及び考察
 保育環境課題(保育室・園庭)の3時点計3623回答から,同一時期・課題内での繰り返しや対象が特定できない11回答(全体の0.3%)をエラーとして除外し,3612語を分析対象とした。
 単語親密度を実習段階・時期別に算出したところ,7点満点中5.82(見学実習後,園庭)~6.12(実習未経験,保育室)と全体に高かった。
 生成語数について,実習段階(未経験/見学実習後/責任実習後)×課題(保育室/園庭)の2要因の分散分析を行ったところ,実習段階×課題の交互作用が有意であった(F=3.2,p<.05)。下位分析の結果,いずれの時点でも保育室課題の方が園庭課題よりも生成語数が多かった。また,園庭課題では実習段階による差はみられず,保育室課題では実習未経験時点の生成語数がその後の2時点よりも有意に少なかった。したがって,生成語数に関しては実習の種類による差はみられなかった。
 生成語の内容を検討するため,各単語を以下の図に示す7カテゴリに分類した。見学実習と比べると責任実習後では,玩具に代表される子どもの遊びにかかわるものの他,横断的に検討した既報1)同様,布巾等の生活用品の生成が多かった。
 回答方略にも,子どもに関わるものだけではなく,保育者としての作業内容に関わる場面が思い浮かんだという記述がみられ,実習の性質が異なることによる影響を示唆していた。
1) 大神優子 (2015). 保育環境知識に関する語想起課題の検討―実習経験の有無による比較―. 和洋女子大学紀要,55.99-107.
2) 大神優子 (2016). 保育環境知識に関する語想起課題の検討―実習前後の比較―. 和洋女子大学紀要,56.67-74.
謝辞.本研究の一部は,科研費(基盤研究C)(課題番号26380901)の助成を受けた。