The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PB43] 自律的英語学習者が持つ信念と動機づけ

島田英昭1, 鈴木俊太郎#2, 田中江扶#3 (1.信州大学, 2.信州大学, 3.信州大学)

Keywords:英語, 自己決定理論, 期待理論

問題と目的
 グローバル化の中で英語学習のニーズが高まっている。英語が使えるようになるためには,大学の授業や企業の研修の時間のみでは不足し,自習の時間を確保することが不可欠である。
 本研究は,動機づけの自己決定理論の枠組みにおいて,英語学習に対して内発的あるいは同一化的動機づけ傾向を持つ個人を「自律的英語学習者」と定義する。そして,次の2点の仮説を検証する。(1)自律的英語学習者は英語学習における動機づけが高い,(2)自律的英語学習者は英語に対するポジティブな信念を持ち,その信念を媒介することで動機づけが高まる。
方   法
材料
 英語学習の自律的動機づけ尺度 西村ほか(2011)の自律的学習動機尺度を改編し,英語学習に特化させて使用した。全20項目であり,内的,同一化的,取り入れ的,外的の4因子構造である。4段階評価で回答を求めた。
 英語・英語学習に対する信念尺度 先行研究(BALLI等)を参考に,動機づけの期待理論に基づき,随伴性の認知(例:英語の勉強をしっかりすれば、英語が実用的に使えるようになる)と価値の認知(英語が使えることは人生を豊かにする)について各12項目を作成した。5段階評価で回答を求めた。
 英語学習の自己効力感尺度 動機づけの指標として英語学習に対する自己効力感を測定する尺度をオリジナルに作成した(英語の勉強時間を確保することは容易だ)。
参加者
 日本語母語話者である大学生246名(平均年齢19.7歳,男性91名,女性152名,不明3名)を対象とした。欠損値が多い1名を除き,245名を分析対象とした。
手続き
 大学の講義中に協力を求め,任意のペースで回答を求めた。
結果と考察
 英語学習の自律的動機づけ尺度については,各因子の尺度得点を算出した。英語・英語学習に対する信念尺度については,随伴性と価値の認知について尺度得点を算出した。ただし,随伴性の認知に関する1項目は天井効果のため除外した。英語学習の自己効力感尺度については尺度得点を算出した。
 仮説を検証するために,図1に示すモデルにおいて共分散構造分析を行った。自律的動機づけから信念,信念から自己効力感,自律的動機づけから自己効力感の各パスの有無の組み合わせにより,8種のモデルを比較した。AIC,BICから判断した結果,信念から自己効力感のパスのみを除外したモデルの適合度がよく,最終モデルとした。
 第1の仮説に関して,内的,同一化的,取り入れ的調整から正の,外的調整から負の自己効力感に対する有意なパスがみられた。ここから,内的,同一化的,取り入れ的調整は動機づけを高め,外的調整は動機づけを弱めることが明らかになった。また,内的,同一化的調整が動機づけを高めることから,第1の仮説である自律的英語学習者は英語学習における動機づけが高いことが示された。
 次に第2の仮説に関して,同一化的調整から随伴性の認知,および内的調整と同一化的調整から価値の認知への有意なパスがみられた。しかし,信念から自己効力感へのパスはみられなかった。ここから,第2の仮説に関しては,自律的英語学習者は英語に対するポジティブな信念を持つという点については支持されたが,その信念を媒介することで動機づけが高まるという点については支持されなかった。
引用文献
西村多久磨・河村茂雄・櫻井茂男 (2011).自律的な学習動機づけとメタ認知的方略が学業成績を予測するプロセス-内発的な学習動機づけは学業成績を予測することができるのか?- 教育心理学研究, 59, 77-87.

 本研究はJSPS科研費15K02675の助成を受けたものです。