The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PB50] 対立する議論のバイアスがかかった同化

成人対象のオンライン実験による検討

小林敬一 (静岡大学)

Keywords:対立する議論, バイアスがかかった同化, 関連づけ処理

問題と目的
 人にはしばしば事前態度に合わせて議論を評価してしまう傾向があり,バイアスがかかった同化と呼ばれている。このバイアスを軽減する処理として,小林(2016)は,大学生対象の実験で対立する議論を関連づける処理が有効であることを明らかにした。ただし,バイアスがかかった同化研究一般に言えることだが,その効果が大学生を超えて当てはまるか不明である。本研究では,18歳以上の成人を対象にして,同様の効果が確認されるか検討した。また,対立する議論を逐次提示した場合(関連づけ処理をしにくくなる)と同時提示した場合(関連づけ処理をしやすい)で事前態度の影響がどう異なるかについても検討した。
研 究 1
 方法 406名(18~69歳)を対象にインターネット実験を実施した。実験ではまず,サマータイム制度の既知感と個人的重要性,制度の日本導入に対する事前態度を調べ,サマータイム制度の省エネ効果または経済的影響について対立する議論を読んでもらった。半数の実験参加者には2つの議論を1つずつ提示し(逐次提示条件),残りの半数には同時に提示した(同時提示条件)。その後,各議論の質(説得力,妥当性)を評定し,読解中に関連づけ処理をおこなったかどうか答えてもらった。
 結果と考察 実験参加者の65.0%が関連づけ処理をおこなったと報告した。条件間の差は有意でなかった(χ2<1)。バイアスがかかった同化の生起に対する提示条件・関連づけ処理の調整効果を調べるため,争点・議論ごとに階層的回帰分析(ステップ1:年齢,性別,既知感,個人的重要性,事前態度,提示条件,関連づけ処理の有無,ステップ2:事前態度×提示条件,事前態度×関連づけ処理の有無)を実施した。その結果,争点・議論に関わりなく,事前態度は議論評価の有意な説明変数であった。しかし,ステップ2はいずれもモデルを有意に改善しなかった。
研 究 2
 方法 447名(18~69歳)を対象にインターネット実験を実施した。基本的な材料・手続きは実験1と同じであるが,大きく次の3点を変更した。1.対立議論に,関連づけることで各議論を評価できる重要情報を追加した。2.読解中におこなった関連づけ処理の程度を7段階で評定してもらった。3.読解後,重要情報に注目したか調べる記憶テストを実施した。
 結果と考察 関連づけ処理の程度(M=3.94),重要情報の記憶に関して条件間の差は有意でなかった(ts<1)。また,研究1と同様の,階層的回帰分析(ステップ1:年齢,性別,既知感,個人的重要性,事前態度,提示条件,関連づけ処理の程度,重要情報の記憶,ステップ2:事前態度×提示条件,事前態度×関連づけ処理)を実施した。その結果,経済的影響に関する否定的議論を除いて,事前態度は議論評価の有意な説明変数であった。加えて,省エネ効果に関する肯定的議論,経済的影響に関する否定的議論それぞれで,ステップ2がモデルを有意に改善し(ΔR 2=.06,.02),事前態度×関連づけ処理の交互作用が有意であった。Johnson-Neyman法を用いて単純傾斜の分析をおこなったところ,省エネ効果に関する肯定的議論の場合,関連づけ処理の値が平均よりも.80 SDを超える時に,また経済的影響に関する否定的議論の場合,関連づけ処理の値が平均よりも2.86 SD未満の時に,事前態度の効果は有意にゼロを超えていた(図1参照)。