The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PB52] 中学生における性格特性とコーピングの関連

松本じゅん子 (長野県看護大学)

Keywords:Big Five factors, coping strategies, stressor

目   的
 中学生の学校生活においては,友人関係におけるストレッサーの占める割合が大きい(岡安他,1992)。中学生のコーピングスタイルとその有効性については,友人ストレッサーに対して,思考の肯定的変換とサポート希求の対処がストレス反応を緩和・減少する効果があることが示されている(松崎・小林,2004)。一方,諦めはストレス反応を増加させると推測され,コーピングとしての有効性が低いことが示唆されている。また,コーピングについては,性格特性との影響が示されている(山口・近藤,1994;山城・小泉,2000)。しかし,これまでは,特に友人ストレッサーに対する性格とコーピングの関係や有効性については明らかにはなっていない。本研究では,中学生における友人ストレッサーに対する性格特性とコーピングの関係及びコーピングの有効性を検討することとした。
方   法
対象者:公立中学校2年生150名(男子63名,女子87名)。
質問紙:以下の内容を含む質問紙を作成した。
(1) 性格
 主要5因子性格検査(村上他,1997)を用いた。質問は計70項目あり,「外向性」,「協調性」,「勤勉性」,「情緒安定生」,「知性」の下位尺度から構成された。中学生には理解しにくいと思われる質問項目には,簡潔に意味を添えた。回答は,「あてはまる」(1点)または「あてはまらない」(0点)のいずれかを選択してもらい,評定を求めた。
(2) コーピング
 中学生コーピング尺度(三浦他,1997)を使用した。計30項目から成り,友人との関係で嫌な出来事があった時に,各コーピングについて,「全然しなかった」(0点),「あまりしなかった」(1点),「少しした」(2点),「よくした」(3点)から回答を求めた.尺度は,「積極的対処」,「サポート希求」,「認知的対処」の下位尺度から構成された。
(3) ストレス反応
 各コーピング後のストレス反応を尋ねた。「ストレスがとても減った」(1点),「ストレスが少し減った」(2点),「わからない・変わらなかった」(3点),「ストレスが増えた」(4点)で評定を求めた。
結果と考察
 男子54名,女子78名,不明2名の計134名から回答が得られ,回収率は89.3%であった。
性格特性
 下位尺度(因子)ごとに平均点を算出した。平均得点が最も高かった特性は「協調性」であり(M=.58,SD=.45),次に「外向性」が高かった(M=.53,SD=.38)。反対に,「知性」は最も低かった(M=.32,SD=.39)。
コーピング
 コーピングパターンごとに平均点を算出した。全体的にコーピングをあまり行わない生徒が多いと推察された(積極的対処:M=1.62,SD=.96,サポート希:M=1.32,SD=1.05,認知的対処:M=1.45,SD=1.06)。
ストレス反応
 各コーピングを「少しした」,「よくした」を選択した場合のみを扱い,平均点を算出した。ストレスの程度が「変わらなかった,わからない」と答えた生徒が多いことが示唆された(積極的対処:M=2.80,SD=.86,サポート希求:M=2.51,SD=.92,認知的対処:M=2.64,SD=.91)。
性格特性とストレスコーピングの関係
 性格特性とストレスコーピングの相関係数を算出した(Table 1)。協調性,勤勉性,知性と積極的対処,知性とサポート希求に弱い正の相関が認められた。情緒安定性と認知的対処においては,弱い負の相関が認められた。
 以上から,友人ストレッサーに対しては,協調性,勤勉性,知性が高いほど,問題と積極的に向き合い,また,知性が高いほど,問題に関連した情報を得たり,問題解決に役立つ助言を求めたりすることが考えられた。一方,情緒安定性が高いほど,諦めたり開き直ったりしないことが示された。しかし,コーピングの有効性については示されず,どのようなコーピングが実際有効であるのかをさらに検討する必要がある。