The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PB53] コミュニケーションスキルとネット上のトラブル対処の関連性

石川真1, 平田乃美2 (1.上越教育大学, 2.白鴎大学)

Keywords:コミュニケーションスキル

はじめに
 内閣府(2016)の調査によると,児童・生徒がネット上のサービス利用時に複数のトラブルに遭遇していることが確認できるが,このうち「悪口やいやがらせのメッセージやメールを送られたり,書き込みをされたことがある」は全体の2.9%を占めている。とりわけ,中学生女子4.9%,高校生女子4.4%と高い数値を示している。
 ところで石川・平田(2014)は,社会的スキルの高い者の方が低い者よりもネット上における他者と良好な関わり方をしている傾向を明らかとした。対人間のトラブルに遭遇した際においても,社会的スキルによって対処に違いが見られる可能性がある。そこで本研究では,ネット上での送り手としての感情表現を含む伝達力,および受け手における相手のメッセージに対する理解力のコミュニケーションスキルに着目し,ネット上でのトラブルへの対処との関連性について明らかとすることを目的とする。
方   法
【調査対象・時期】情報教育関連の講義科目の受講者である学部生と大学院生計154名(男78名,女76名/18~25歳)を対象とし,質問紙調査を授業時間内に実施した。
【調査項目】調査対象者には,a.社会的スキル(18項目)(菊池,1988),b.最も利用頻度の高いネット上のコミュニケーションサービス(1項目),c.bで挙げたサービスに関するコミュニケーションの傾向(4項目),d.コメントやメッセージ等の表現に関する誤解の経験(2項目,記述式),e.ネット上の感情等(喜び,怒り,悲しみ,楽しさ,共感,感謝の6項目)に関して,(ⅰ)他者からの表現の理解力,(ⅱ)対面と比較した際のネット上での他者からの表現の理解力,(ⅲ)自分自身の伝達力,(ⅳ)対面と比較した際のネット上での自分自身の伝達力(7件法),f.ネット上のトラブル3事例(C1:個人情報の漏洩,C2:誹謗中傷・炎上,C3:嫌がらせ・迷惑行為)に対し,それぞれ,被害者の立場と加害者の立場から,(1)各事例の経験の有無,(2)各事例への対処の可否,(3)対処に必要な能力(自由記述)の回答を求めた。今回はこのうちeおよびf(2)を分析対象とした。
結果および考察
 ネット上の感情等の表現(6項目)は,理解力((ⅰ),(ⅱ))と伝達力((ⅲ),(ⅳ))のそれぞれの信頼性係数が順に.87,.95,.89,.95であった。この結果を踏まえ,各6項目の数値を合成して(ⅰ)〜(ⅳ)のコミュニケーションスキル指標とした。fの3つの事例について,被害者,加害者ごとの対処の可否をダミー変数による独立変数とし,(ⅰ)〜(ⅳ)のスキル指標を従属変数とした変数増減法による重回帰分析を行い,有意となるモデルを抽出した(Table 1)。いずれのケースにおいても,コミュニケーションスキルの高い者の方が低い者に比べてネット上のトラブルに対処できる傾向が示された。C1のケースでは,被害者,加害者いずれのケースでも相手のメッセージに対して理解する力が重要であり,C2のケースでは,被害者の場合において伝達する力や対面場面よりも相手のメッセージを理解する力が必要である。C3のケースでは,加害者の場合において,C2と同様のスキルが重要であることが示された。
 トラブルの種類(事例)や立場の違い(被害者,加害者)によって関連の高いスキルが異なることから,その要因を探るために今回取り上げていない種類のトラブルとコミュニケーションスキルの関連について検討していくことが今後の課題である。
引用文献
石川 真・平田乃美(2014).ネットコミュニティへの関与の違いに着目した他者とのつながりの傾向.日本社会心理学会第53回大会発表論文集,352.
菊池章夫(1988).思いやりを科学する,川島書店.
内閣府(2016).平成27年度 青少年のインターネット利用環境実態調査
本研究はJSPS科研費15K01751の助成を受けた。