日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

2016年10月8日(土) 13:00 〜 15:00 展示場 (1階展示場)

[PB54] 逸脱児童の問題視を規定する行動特性と学級集団特性の検討

逸脱児童の対人関係を中心に

弓削洋子1, 後藤倫美#2 (1.愛知教育大学, 2.愛知教育大学大学院)

キーワード:問題行動, 学級集団, 内容分析

目   的
 従来の児童生徒の問題行動研究は,児童生徒の逸脱行動の問題度を行動内容から検討し,どのように教師が対応するかを検討してきた。一方で,逸脱行動をとる児童生徒(逸脱児)を問題視する学級集団の文脈についての議論は十分ではない。この課題について,小学校において逸脱児が問題視される学級と問題視されない学級について,逸脱児の行動特性と,学級集団特性として逸脱児と教師・同級生との関係性を取り上げ,自由記述内容の比較から検討することを目的とする。
方   法
調査協力者 小学校教師66名(男性19,女性46,不明1)。教職歴平均16.3年(SD=11.8,2-42)。
手続き 2015年8~9月に質問紙調査を実施した。逸脱児がいた担任学級のうち,まとまりがあり積極的に学習や諸活動に参加した学級(積極的学級)と,まとまりがなく活動への参加が消極的な学級(消極的学級)を想起させ,(1)逸脱児の行動特徴,学力等,(2)逸脱児と教師・同級生との関係(関わり方,逸脱児の反応)について,自由記述してもらった。
結   果
問題視評定(2016年発心大会にて発表) 逸脱児の逸脱度評定は学級条件で差はなかったが,問題視評定は,積極的学級よりも消極的学級のほうが高かった。
自由記述の内容分析 計量テキスト分析(樋口,2014)のためにKH Coder Ver.3.Alpha.07b(樋口,2016)を使用した。出現回数の多い単語,および各学級条件と関連度(Jaccard類似性測度:条件と単語が共に出現する確率)の高い単語(Table 1)をもとに,原文と照らし合わせて単語をコーディングした。各学級条件に対する各コードのJaccard類似性測度を共起ネットワークにて図示した(Figure 1)。学力や暴力など行動特徴のコードは,いずれの学級の逸脱児とも関連する一方で,同級生および教師との関係のコードに違いがみられた。積極的学級と関連しているのは,逸脱児の「自ら関わらない」と,同級生の「受け入れ」「集団」活動,教師の「声かけ・配慮」と「個別指導」「肯定的接し方」であり,対人関係が肯定的・配慮的であると推測できる。対して,消極的学級と関連しているのは,「受け入れ」「一緒」に遊ぶとともに「敬遠」「拒否」,逸脱児の「反発」「上に立つ」,さらに教師の「話を聞く」「注意叱責」であり,対人関係に肯定・否定の両面がみられる。
考   察
 積極的学級では逸脱児は学級集団に溶け込んでいるが,消極的学級では逸脱児の態度と周りの反応の齟齬,教師も含めた学級内の分裂が推測される。学級全体の人間関係や学級経営の分析が必要である。
(平成28年度科研費〔16K04299〕の助成を受けた)
引用文献
樋口耕一(2014).社会調査のための計量テキスト分析 ナカニシヤ出版