The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PB59] 保育者養成校学生の保育職適応に関する研究

保育者効力感とレジリエンス及びSOCの関係について

原孝成1, 小川幸代#2 (1.鎌倉女子大学短期大学部, 2.鎌倉女子大学短期大学部)

Keywords:保育者効力感, レジリエンス, 首尾一貫感覚

 現在保育者の慢性的な人材不足が社会問題化しているが,その一因として,保育者の早期離職の問題があり,保育者のメンタルヘルスの改善や職場適応は重要な問題となってきている。そのため,保育者養成課程における効果的なストレスマネジメント教育開発の一環として,学生の保育者としての行動特性や心理的ストレス耐性などが,保育者として勤務した後の保育職適応にどのような影響を及ぼしているかを明らかにすることが必要となる。その手始めとして本研究では,学生の保育者効力感とレジリエンス及びSOCの関係を明にすることを目的とする。
方   法
調査対象:保育者養成校である短期大学に所属する2年生44名(全員女性,平均年齢20.0歳,範囲19歳~28歳)。対象学生の多くは保育士と幼稚園教諭の2つの資格・免許の取得を目指しており,調査時期は教育実習・保育実習などの全ての学外実習が終了した後に実施した。
調査項目;保育者効力感:三木・桜井(1998)が作成した保育者効力感尺度を用いた。レジリエンス:S−H式レジリエンス検査用紙(佐藤・祐宗, 2009)を使用した。首尾一貫感覚:日本語版SOCスケール(13項目)(戸ケ里・山崎, 2005)を使用した。
倫理的配慮:本研究は鎌倉女子大学研究計画倫理審査を経て実施した。
結   果
 保育者効力感の平均評定得点の全体平均(M=3.01,SD=.55)を算出し,それよりも高い群を保育者効力高群(23名),それよりも低い群を保育者効力低群(16名)とした。
 保育者効力とレジリエンスの関連をみるために,ソーシャルサポート,自己効力感,社会性及び合計得点ごとにt検定を行った。その結果,自己効力感得点で有意差(t(32)=2.43, p<.05)がみられ,保育者効力感高群は低群よりもレジリエンスにおける自己効力感が高いことが示された。次に,保育者効力とSOCの関連をみるために,SOCの有意味感,全体把握感,処理可能感,及び合計得点ごとにt検定を行った。その結果有意味感得点で有意な差(t(37)=2.82, p<.01)がみられ,保育者効力感高群は低群よりも有意味感が高いことが示された。
考   察
 保育者効力感の高い学生はレジリエンスにおける自己効力感が高く,保育者効力が一般的な個人特性としての自己効力として捉えられることが示された。しかしながら,ソーシャルサポートと社会性及びレジリエンス全体の得点に特に影響はしていなかった。SOCにおいても辛いことや面白みがないことにたいしても何らかの意味を見出だせる感覚である有意味感では保育者効力高群は低群よりも高かったが,全体のプロセスを時系列的に見通せる感覚である全体把握感やこれまでの体験に基づき,ここまでは処理できると判断する感覚である処理可能感では差がみられなかった。このことから,保育者効力感は保育者としての職務に取り組む姿勢に影響するが,問題が起こった際に周囲へ援助要請するなどの対処には影響しない可能性が推察される。