The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PB60] 青年期における自己愛傾向と敵意帰属の関連について

場面ごとの分析結果を踏まえて

相澤直樹 (神戸大学)

Keywords:敵意帰属, 自己愛傾向, 青年期

問題と目的
 近年になり,さまざまな心理的苦悩や行動上の問題の維持と発生について,認知の歪みや偏りの役割が重視されるようになった。その代表的なのものに敵意帰属に関する研究が挙げられる(吉澤・大西・ジニ・吉田, 2015)。敵意帰属とは,意図の曖昧な他者から何らかの阻害を被る対人挑発場面において,それを相手の敵意に帰属しやすい傾向を指す。この認知特性は,子どもから大人まで幅広い範囲での攻撃行動に結びつくことが示されている(Dodge, 1980; Crick & Dodge, 1994)。
 このような敵意帰属は,攻撃行動以外にも様々な心理的問題と関連することが示されている(Combs, Penn, Wicher, & Waldheter, 200)。相澤(2015)は,その中でも特に青年期にみられる自己愛傾向に着目し,場面想定法による敵意帰属尺度との関連を検討している。その結果,仮説を支持する有意な敵意帰属と怒りの交互作用を検出した。ただし,その際,敵意帰属関連の尺度の信頼性の低さが問題となった。そこで,相澤(2016)は,場面想定法における回答項目数を増やすことにより,信頼性の改善を目的とした尺度の再構成をおこなっている。本研究では,新たに作成された場面想定法による敵意帰属の測定法を用いて,それと青年期における自己愛傾向の関連を検討した。
方   法
1)調査協力者は,近畿圏の4年制大学に通う大学生294名(平均年齢19.73±1.07,女性116男性178)。調査期間は2015年10月~12月。相澤(2015)の場面想定法による意図判断測定法の4場面に対して,敵意帰属を測定する項目,非敵意帰属を測定する項目,怒りを測定する項目各2項目を添付したものを用いた。自己愛人格尺度(NPS)短縮版(谷,2006),自己関心・共感性の欠如尺度(ECDS, 原田, 2009),自尊感情尺度を同時に実施した。なお,今回の分析では男性の調査データのみを用いた。統計解析にはHAD(清水・村山・大坊, 2006)を用いた。
結   果
1)敵意帰属得点,怒り得点と自己愛傾向の関連
 相澤(2016)に従い,4場面の敵意帰属項目,非敵意帰属項目,怒り項目をすべて合計し,敵意帰属得点,非敵意帰属得点,怒り得点を算出した。そのうえで,NPSの下位尺度得点(有能感・優越感,自己主張性・自己中心性,注目・賞賛欲求,自己愛性抑うつ,自己愛的憤怒)とECDSの総得点を目的変数とし,敵意帰属得点,怒り得点,交互作用項を説明変数とする階層重回帰分析を実施した。しかしながら,仮説を支持する有意な交互作用は検出されなかった。
2)場面ごとの敵意帰属項目得点,怒り項目得点と自己愛傾向の関連
 そこで,場面ごとの敵意帰属項目得点,怒り得点を用いて同様の階層重回帰分析を実施した。その結果,「衝突」場面と「タクシー」場面で一部仮説を支持する有意な交互作用が検出された。
考   察
 今回の調査結果では,4場面の合計得点を用いた分析では有意な結果が得られなかった。このことは,対人挑発場面の具体的な場面内容の違いの影響を示唆するものといえる。今後この点を踏まえた測定方法や分析方法を検討する必要がある。