日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

2016年10月8日(土) 13:00 〜 15:00 展示場 (1階展示場)

[PB64] 学生相談に関するアニメの制作と心理教育

学生相談室の相談を架空事例としてアニメを制作する

和田百合子 (美作大学)

キーワード:学生相談, アニメ, 心理教育

目   的
 A学生相談室で受けることが多かった相談内容や学生の取組みを振り返り,架空の事例を作成する。これを基にアニメを制作し,学生を対象にした,心の健康を守るための心理教育の授業においてアニメを活用し,その効果を考察することである。
方   法
アニメの制作
 A学生相談室に特有な相談内容,課題がおきやすい場面,学生の発言や課題の乗り越え方を過去の事例を参考に整理する。これを基に,架空の事例とその脚本を作成する。これに描画を合成して漫画にする。漫画は,中村ひかり(学生)に描画を依頼した。本漫画に音声をつけて編集を行い,アニメにする。この作業は,B大学の学生グループ「熊猫」に依頼した。
心理教育の授業
 毎年全1年生を対象にした授業があり,身体の健康,心の健康,食生活を守るなどの目的で1日授業が実施される。発表者は,心の健康を担当する。パワーポイントのスライドとアニメを活用した授業を実施して記述式のアンケートを実施する。
結   果
 A学生相談室の1年生に多い困難の1つは,「一人になる時間がなくしんどい,大学なのに一度グループができると他の学生と接触しにくい,孤立は嫌だが対人関係が密になりすぎて苦痛」というものである。適切な対人関係の距離を構築することやグループ以外に居場所を作ることで解決する学生が多い。2つ目は,時間や作業量の自己管理ができない為に欠席し,資格取得の放棄,卒業の困難へとつながる悩みである。早期に教員や学生支援職につながることで退学に至らない学生も多い。前者を春子,後者を夏子としてアニメにした。
平成28年にアニメを利用し,「私の心を育てる」という授業名で1年生約370名を対象に45分間で実施し,記述式のアンケートをした。受講者には引き寄せられて視聴している様子が見られた。アンケートから本学特有の心の課題や環境の特性を理解し,適切な人間関係を作る必要や,生活リズムを自己管理する必要性を確認できたといった感想を得た。印象に残った言葉は,「悩むことで悩むな,自分の居場所を作ることが大切,個性を大事にする,困ったら早く相談する」等であった。
考   察
 大学はアッとホームさが特徴だが,地域性,1200名程の規模,クラス制,資格取得が中心等の特性の為,1,2年生は友人やクラスメートとの接触時間が過剰になり対人関係のしんどさにつながると考えられる。授業でアニメを活用することで,適切な対人関係の距離をとる,自分と友人の個性を大事にする,悩むことで悩むな,悩みは宝石の原石等を伝える等の心理教育の効果を高められたと考える。授業目的に合わせ,アニメを口頭説明,スライドと統合する努力も必要であった。
引用文献
1)春子と夏子のはなし。原画