The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PC(01-64)

ポスター発表 PC(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 3:30 PM - 5:30 PM 展示場 (1階展示場)

[PC25] 大学初年次の社会的動機づけの変化

友人関係とグループ活動に着目して

名取洋典 (いわき明星大学)

Keywords:初年次教育, 大学生, 動機づけ

目   的
 本研究では,グループ活動を中心にしたプログラムを新たに初年次教育に導入した大学における,学生の動機づけの継時的な変化を明らかにすることを目的とする。特に,友人関係への動機づけとグループ活動への動機づけに着目した。
方   法
調査対象者 東北地方の私立大学1年生89名(男子53名,女子36名,平均18.05歳(SD=0.21))。不備のある回答は,分析ごとに除外した。
調査内容 1)友人関係への動機づけ 岡田(2005)が作成した質問項目から,各因子に負荷量が高かった2項目ずつを選出した(計8項目,5件法)。
2)グループ活動への動機づけ 中西・中島・大道・益川・守山・下村・長濱・中山(2014)が作成した質問項目から,各因子に負荷量が高かった2項目ずつを選出した(計10項目,5件法)。教示文を変更し,グループ活動についての回答を求めた。
 なお,調査用紙には,授業の効果測定を目的とした他の質問項目も含まれていた。全体の項目数は89項目(1回目のみ88項目)であった。
調査期日および手続き 2016年度を通して8回の調査を行った。通常の授業とは別に2日間行われた研修会の開始時(4月1日)に1回目を行い,研修後(4月3日)に2回目を行った。以後,前期2回(5月26日,7月21日),後期4回(9月15日,10月27日,12月22日,1月19日)行った。学期の開始時,終了時に加えて,プログラム内容の転換期に行っている。
 授業内に15分程度の時間を設け,一斉に質問紙の配布および回収を行った。
結果と考察
 友人関係およびグループ活動への動機づけを従属変数とし,測定時期を参加者内要因とする,1要因分散分析を行った。
友人への動機づけの変化 「外的」,「取り入れ」,「同一化」,「内発」の4つの下位尺度すべてにおいて,調査時期による差は有意ではなかった(順に,F(7, 224)=2.03; F(7, 224)=1.07; F(7, 217)=1.75; F(7, 224)= 1.71)。友人関係への動機づけは,個人内で比較的安定していると考えられる。
グループ活動への動機づけの変化 「他者からの刺激による動機づけ」(F(7, 224)=3.20,ηp2=.09, p=.003),「メンバーからの被嫌悪回避動機」(F(7, 231)=6.43,ηp2=.16 p<.001),「グループに対する貢献動機」(F(7, 231)= 4.63,ηp2=.12, p<.001)の3つの下位尺度にいて,調査時期の有意な主効果がみられた。Bonferroni法による多重比較の結果,「他者からの刺激による動機づけ」は,1回目に比べて2回目で高かったことが示された。また,「メンバーからの被嫌悪回避動機」は1回目で3,4,5,6回目より高いのに加えて,2回目で3回目よりも高かったことが示された。「グループに対する貢献動機」は6回目で最も低く,2回目,4回目,8回目と有意な差がみられた。「メンバーからの被評価動機」,「グループに対する被評価動機」の2つの下位尺度においては,調査時期による差は有意ではなかった(順に,F(7, 231)=1.77; 2.04)。
 入学式前に行われた集中的な研修の中で他者とかかわることにより,刺激を受けてグループ活動への動機づけが高まったと考えられる。一方で,新たな環境で「嫌われる」という不安は,活動を重ねることで低下していったと考えることができる。また,グループに貢献しようとする姿勢はいったん低下するものの,最終的には向上していくと考えられる。
 今後,プログラムの内容との関連についてさらに検討を進めたい。
文   献
中西良文・中島 誠・大道一弘・益川優子・守山紗弥加・下村智子・長濱文与・中山留美子 (2014).協同学習場面における社会的動機づけ尺度作成の試み 三重大学教育学部研究紀要 (教育科学),65,335-341.
岡田 涼(2005).友人関係への動機づけ尺度の作成および妥当性・信頼性の検討――自己決定理論の枠組みから パーソナリティ研究,14,101-112.